無人店舗

赤羽駅の無人店舗とは?小売業界の今後を担う実証実験を紹介

現在、国内の小売店やコンビニ業界では人材不足の問題が深刻化し、無人店舗の導入を検討し始めました。
特にコンビニ大手のローソンでは、一部店舗でスマホを使ったセルフレジを導入し初め、2025年をめどにほぼ全ての店舗で無人運営すると発表しています。

また、2018年に行われた赤羽駅の実証実験では、流通業界やマスコミなど多くのメディアが取り上げ注目を集めました。
そこで今回は、赤羽駅で実施された無人店舗の実証実験について解説します。

赤羽駅で実施された無人店舗の実証実験とは?

2018年10月17日から2ヶ月間、JR赤羽駅の閉店したキオスクで無人店舗の実証実験が行われました。
AI(人工知能)無人決済システムを開発したサンポスト社が、キオスクにスーパーワンダーレジを導入し、JR東日本と共同で企画です。
キオスクの再生と人材不足への対応を目的とし、採算性の取れない店舗を無人化しながら人件費を抑える計画です。
また、コンビニとの競合で新聞・雑誌・タバコの売上が減っているキオスクですが、採算が取れない場所でも運営が可能な無人店舗を導入し、利便性の向上も目指しています。

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赤羽駅の無人店舗で導入されたシステムとは?

今回、実験で使用された無人店舗のキオスクには、店内に合計100台以上のAIカメラを設置されました。
天井には人物用のカメラを16台、陳列棚には商品を識別するためのカメラが約100台設置されました。
店内に張り巡らせたカメラで人物・商品を撮影しながら、AI無人決済システムによって、どの人物がどの商品を取ったのかが認識されます。
特にAIは、飲料・ベーカリー・菓子類といった約140品目の商品を識別し、カバンに商品を入れても店内のカメラで認識が可能です。ちなみに、事前学習させることで新しい商品の追加もできます。

またAI無人決済システムは、顧客の性別・購買履歴・年齢といったマーケティングデータが得られますが、個人情報保護の観点から今回は決済終了後に削除されました。

 

赤羽駅の無人店舗で買い物するには?

入店の際は、電子マネーを入り口の端末にかざすことでゲートが開きます。
今回の無人店舗の同時入場は3人までですが、システム的には3人以上でも認識し、親子連れもそれぞれ判別できます。
また、電子マネーは主にSuicaを利用しますが、他社の交通系ICカードであるPASMOも使用可能です。
店内に入ると、通常の買い物と同じように商品が選べ、一度手にした商品を元に戻してもAIがきちんと認識します。
そして出口のゲートに立つと、ディスプレイに商品名・料金が表示され、間違いなければ電子マネーをかざし精算します。
精算が済み、レシートが出たあとにゲートが開いて退店できます。ちなみに何も持っていない場合は、退店ボタンを押すだけでお店から出られます。
ただ、残高が不足していた場合は一度商品を棚に戻し、お店の外に出て電子マネーへのチャージが必要です。

 

 

赤羽駅の無人店舗で改善できた点

前回の大宮駅で行われた無人店舗の実証実験では、店舗に1人しか入れませんでしたが、今回の赤羽駅は同時に3人まで入店が可能になりました。
また、前回は一度取った商品を棚に戻すと認識できなかったのが改善され、さらに2つの商品を同時に取ったり、棚の奥から商品を取ってもAIが認識。
利用者からの評判も上々で、モニターに自分の選んだ商品が表示されること自体がすごい!といった声や、何より「決済が早い」という声が多く聞かれました。
特に女性客からは、無人だと大盛りの弁当など買いにくいものも買える、といった反応も見受けられ好評価です。
今回は閉店したキオスクの跡地に設置しましたが、店舗面積が約21平方メートルにも関わらず140品目もの商品を陳列でき、レジや店員のスペースを省略できた恩恵を受けられました。

 

赤羽駅の無人店舗で出た課題

今回の赤羽駅における実証実験では、現在のカメラ精度では実用化が難しく、人物・商品の認識精度をさらに上げる必要がある、との結論が出ました。
例えば、同じ商品でも「季節限定」といった異なるパッケージになると認識できなくなったり、店内に3人以上入店すると認識率が落ちる、といった問題を解決する必要があります。
また、カメラやレジなどの設備面だけではなく、オペレーションの部分でも課題を残しています。
特に、陳列やトラブル対応といった部分は人間の手が必要となるので、完全無人化にはまだ時間がかかりそうです。

赤羽の無人店舗での課題は2019年に高輪ゲートウェイにオープンした「Touch To Go」への活かされています。

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今回の無人店舗における実証実験では、一部の関係者の間で「接客がなくなるのでサービス低下につながらないか?」という懸念がありました。
しかし、近年はスピード・キャッシュレスを求める人が増えたため、蓋を開けてみるとおおむね好評となり、大きなトラブルを発生させることなく実験は終了しました。
小売業界、特にコンビニやキオスクといった小型店舗は、人材不足が加速するにつれて無人店舗へと舵を切ると予測されています。
今後も無人店舗の実証実験が行われ、実用化に向けて着々と準備が進んでいます。

 

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