ホテルはネットでの予約は当たり前になってきていますが、それ以外のホテル運営は未だ労働集約的なままです。
各業界がデジタルトランスフィーメーションを進め、デジタル化やIT化を推進する中で、ホテルや宿泊業はその流れに完全に乗り遅れていました。
それでも昨今、宿泊業界でもDX化を推進する傾向になってきており、ITの活用で「無人ホテル」というチャレンジによって、業務の省力化・効率化と、顧客満足度の向上との両立を目指す動きが出てきています。
無人ホテルの定義
労働集約的なホテル業務といえば、フロント業務で宿泊者名簿の情報収集・予約管理・本人確認、鍵の受け渡し、決済を主に行っています。
最近では決済についてはセルフサービスで行うホテルも増えてきていますが、フロント業務は変わらず存在しています。
宿泊予約をネットで事前に行っていても、フロントにて再度宿泊者名簿に記入を促されます。
実は、「旅館業法」という法律にて宿泊者名簿の備え付けが義務付けらており、この規定「旅館業法施行令」が2019年6月に改訂されフロント業務の代替措置が認められるようになり、無人化運営が可能になりました。
この改定では大きく4つのポイントがあり、
- (緊急時に)迅速な対応を可能とする設備を備えていること
- 宿泊者名簿の取得を担保できること
- 出入りの状況を確認できること
- 鍵の適切な受渡しが可能であること
この4点をフロント業務での有人対応をせずに、24時間対応できるITの仕組みがあれば、フロント業務をすべて自動化し、24時間無人で上記業務を実現することができるようなります。
無人ホテルのメリット・リスク
無人ホテルのメリットはホテル側・利用者双方にメリットがあります。
ホテル側にとっては、人員削減によるコスト削減が最大のメリットです。
新しくホテルをオープンする際の人材不足に悩まされることもなくなり、結果的に稼働率が高くなり、事業運営が円滑になることです。
利用者にとっては、ホテルのコストが削減されることで、宿泊代が安くなることが期待でき、中にはフロントでのやり取りを面倒と感じる方もいますのでそのメリットもあります。
一方で、顧客サービスという観点では、お客様の満足度を下げてしまうリスクがあることも理解しておきたいです。
例えば、部屋内のアメニティーが足りない、備品が壊れているなど各種サービスが不可能なことが考えられます。
タクシーの手配やホテル周辺でのレストラン案内などフロント担当者がいれば、対応可能なサービスもできますが、ホテルが提供するホスピタリティ面でのサービスがなくなってしまうことにより、不便性を感じるお客様が一定量発生することは否めません。
無人ホテルを実現するITサービス
無人ホテルを実現するためのサービスには下記のようなものがあります。
- ホテル予約サイト
- ホテル宿泊管理システム
- チェックインサービスシステム
- スマートロック
- 各種サポートの遠隔サポート
- 精算機
これらは従来人が行なっていたことですが、各種サービスも充実してきており、IT化することが可能です。
無人ホテル実現事例
長崎のテーマパーク、ハウステンボスが運営する「変なホテル」は、ロボットが受付業務を行い、ロボットアームで荷物を預かるなど、ロボット活用による無人ホテルで業務効率化に成功しています。
「変なホテル」では、連休などのピーク時で9割、平日でも常に7~8割以上の推移でホテルが稼働できており、運営スタッフは30人から5人にまで減らすことができました。
無人ホテルの最大のメリットであるフロント業務と各種サービスを無人化することによってコスト削減に成功し稼働率を高く維持している成功例です。
次に、無人ホテルのITサービスを提供している事例をご紹介します。
Keeyls株式会社が民泊・ホテルの無人チェックインサービス「KS checkin(ケーエスチェックイン)」は、先にご紹介した無人ホテルのシステム要件を満たすITサービスを提供しています。
- Checkin code(予約番号)発行機能
- 宿泊者情報の収集
- ビデオ通話機能
- 鍵のパスワードと連動
無人ホテルを支援するITサービスも登場してきていることから、ホテルの立地や客層によっては、無人ホテルのメリットを享受できることでしょう。