無人店舗

高輪ゲートウェイ駅の無人店舗「TOUCH TO GO」について徹底解説!

2020年3月23日、高輪ゲートウェイ駅構内に無人決済店舗「TOUCH TO GO」がオープンし、これまで期間限定で実証実験は行われていましたが、今回は初の常設店舗として小売業界内で大きな注目を集めています。

日本の無人店舗の将来を左右し、各社のベンチマークとなる「TOUCH TO GO」について解説します。

 

高輪ゲートウェイ駅の無人店舗「TOUCH TO GO」とは?

TOUCH TO GOは、主にベンチャー企業への出資を行っているJR東日本スタートアップと、AIを活用したシステムを開発しているサンポストが共同設立した会社で、2017年に大宮駅、2018年に赤羽駅で実証実験を行ってきており、今回満を持して高輪ゲートウェイ駅に無人店舗をオープンさせました。

面積は約60平方メートルで、本来3〜4人のスタッフが必要なところを1人で済ませ、人件費を大幅に削減させています。
前回の赤羽駅では商品の種目が約140種類にとどまりましたが、今回は約600種類と大幅に増え、弁当・惣菜・菓子・飲料など駅構内のコンビニと同じような品ぞろえです。
特に高輪ゲートウェイ駅の無人店舗では、オリジナルのエコバッグ・コーヒードリップバッグ・チョコレート・ナッツ類も取りそろえ、他店との差別化を図っています。

また、TOUCH TO GOは人の動きを認識するアルゴリズムを改善させ、前回は認識する人数が3人まででしたが、今回は最大10人まで認識させることに成功しました。
店舗入口とバックヤードから入った人を区別することで、スタッフを客として認識しないなど、人物を識別するAIの精度が大幅に向上しました。

 

ただ、今回の店舗では完全に無人というわけではなく、バックヤードにスタッフが1人常駐し、品出しや商品の発注、酒類の販売などに対応します。

高輪ゲートウェイ無人店舗「TOUCH TO GO」のテクノロジー

赤羽駅の無人店舗の実証実験の際には設置したカメラは100台以上でしたが、今回TOUCH TO GOはカメラの設置台数を50台と約半分にしたことで、コスト削減に成功しました。
また、2D・3D画像に対応した2種類のカメラを組み合わせ、人の動きをより正確に認識することができる様になりました。
さらに重量センサーも商品棚に設置し、誰が何を買ったのかを瞬時に判別できます。

ちなみに今回は、赤羽駅の実証実験で必要だった「交通系ICカードを端末にかざす」という動作は不要で、入り口付近に設置された入店エリアに立つだけでゲートが開き、スムーズに入店が可能です。
店内で商品を選ぶ際は手に持ったまま、もしくは持参したバッグに入れても問題なく認識し通常通り買い物ができます。

商品を選び決済エリアに立つと、設置されたタッチパネルに商品と購入金額が表示され、Suicaなどの交通系ICカードを端末にタッチすれば決済が完了します。
ちなみに決済方法は交通系ICカードのみですが、6月以降はクレジットカード決済にも対応する予定です。
アルコール類を購入する際は、タッチパネル上に確認画面が表示され、バックヤードで店員がカメラで確認した後に決済できます。
また、出口を出たところに電子レンジとセルフ販売用のコーヒーマシンが1台づつ設置され、決済を完了させないとコーヒーの抽出が開始されない仕組みとなっています。

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高輪ゲートウェイ無人店舗「TOUCH TO GO」の狙い

TOUCH TO GOは、24時間365日運営できる仕組みの構築を目指し、あくまでも無人化ではなく省人化を狙っています。
完全無人化を狙わない理由は、1人でもスタッフが常駐することで酒類・弁当の販売許可が下りるからです。
また、将来は無人決済店舗の仕組みを他の小売店や飲食店にも提供する計画で、月額80万円で販売する予定です。

まずは都心に今回の第一号店を出店させ、順次地方の小型店舗にも広げる計画で、1日の売上を30〜40万円に見込みながら、カメラをさらに半分に減らすなどコスト削減を狙っています。

高輪ゲートウェイ無人店舗「TOUCH TO GO」の課題

TOUCH TO GOが掲げる今後の課題として、カメラの精度向上が挙げられます。
現在のカメラ精度では、子どもの予期せぬ動きや顧客が密接した時に上手く認識せず、当面は一度に入店できる人数を7〜10人に制限しています。
また、手にとった商品を他人に渡してしまうと判断できず、その都度顧客が出口で修正しなければなりません。
さらに、高輪ゲートウエイ駅は幅広い年代の方が利用するので、無人レジに慣れない高齢者への対応も急がれています。

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今回、高輪ゲートウェイ駅にオープンした無人決済店舗では、従来の小売店とは異なり、ほぼ人の手がいらない店舗運営が可能です。
ただ、現状はカメラの精度がまだ発展途上で、人数が増えると認識率が下がるという問題を抱えています。
今後は、AIシステムの性能向上や店舗オペレーションの効率が上がり、コスト削減とともに無人店舗を導入するハードルが低くなることが予想されます。
小売業界の中でも、特に人材不足が懸念されているコンビニや小型店舗を中心に、この先も無人店舗化が進むことでしょう。

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