レストランや飲食店はお客様に対してのサービスや料理の提供のみならず、営業時間外にはシフトの調整や各請求書や支払いの対応、食材の発注などバックヤードの業務が多数あります。
そのバックヤードの業務はIT化やデジタル化が進んでおらず、非効率で時間をかけて手作業で行われていることがほとんどです。
その飲食業界においてもデジタルトランスフォーメーション (DX)の傾向はあり、飲食店と生産者を結ぶ食材仕入れプラットフォームがあります。
株式会社プラネット・テーブルが2015年に運営を開始した農畜水産物の流通プラットフォーム「SEND」は現在、食材仕入れサービスとして東京都心8,000軒ものレストランに利用されており、飲食店と生産者を結び、需要と供給をマッチングするサービスの概要とメリットをご紹介します。
「SEND」サービス概要
「SEND」は、インターネットで食材の発注が完結するサービスで、生産者(中小零細の農畜水産業者)が登録した、出荷できる生産物の情報をWebで閲覧・注文でき、常時300種以上の季節食材が揃います。
また、購入者(飲食店側)から食材リクエストを登録することで、生産者へ生産依頼をすることもでき、購入者側は無料の登録で、すぐに取引を開始することができます。
配送はSENDスタッフが行っており、独自の流通システムにより、最短で当日中の食材入手が可能になっており、送料は納品日単位での注文金額8,000円以上で送料無料、4,000円~7,999円の注文で300円(税別)、3,999円までの注文で500円(税別)となります。
現時点では渋谷区の配送センターからのみの配送のため、対象エリアは東京都心の環状7号線以内に限られています。
取り扱いは食材は野菜・肉・魚となっており、それぞれが別のサービスとして展開しています。
「SEND」の流通の仕組み
飲食店が発注した情報はSEND側で集約し、生産者はSENDから出荷依頼された作物を全てまとめてSEND配送センター宛てに出荷します。
商品は配送センター到着後、検品を経て納品先の飲食店ごとに振り分けられ、エリア担当の配送スタッフによって配送されます。
このような独自の流通システムにより、365日配送が可能になっています。
さらに迅速な納品を可能にしているのが、独自の需要予測システムで、サービス開始時から収集・蓄積している、注文履歴・立地・客層・天候といったデータを分析した需要予測に基づき、SENDから生産者に出荷依頼を出します。
出荷された食材はSENDが全量を買い取るため生産者側に負担はなく、購入者は発注以前にSENDから出荷依頼されていた食材を最短のリードタイムで受け取ることができます。
「SEND」を利用するメリット
飲食店が食材仕入れに「SEND」を利用するメリットを紹介します。
一点目は、「新しい食材とたくさん出会える」ということです。
定番の食材のみならず、季節や地域の多様な食材がサービス内で紹介されるため、新しい食材と出会う機会となります。
サイトを確認すると千葉県の「コールラビ」、北海道の「黄人参」、長野県の「とき色ひら茸」など、あまり馴染みのない食材も写真付きで掲載されています。
また先述の通り、食材リクエスト機能によって、希望の食材(品種のみならず、大きさや熟れ具合まで希望が可能)を作ってくれる生産者を募ることもできます。
遠方の食材でも直送に近い形で入手できるため、上手く利用することでメニューの可能性も広がり、店舗のブランディングにも役立ちます。
二点目は、「いつでも・どこでも、スマホ一つで注文できる」ということです。
Web注文と配送のシステムのため、当然のことながら市場やスーパーに買いに行く必要はありません。
午前3時までの注文で当日配送も可能となっており、午前/昼/夕方から選んだ配送時間帯の間に食材が届くのを待っているだけで良いのです。
三点目は、「サービスの利用を通じて、食材の需給バランスの改善や生産者支援に寄与できる」という点です。
このサービスは「フードロスや食材流通システムの老朽化」といった社会課題の改善を目的に開始されました。
中小零細の農家を中心とした生産者がいかに「生産と物流コストの無駄を省けるか」「安定収入を得て品質の良い作物を生産できるか」に重きを置いて開発された需給マッチングのシステムのため、これを利用することで、生産者の持続的な発展、ひいては高品質な食材の安定供給に貢献することができます。優れた生産者を支援することで、飲食業の未来にも繋がります。
一方で少なからずデメリットもあります。
「SEND」は基本的に、中小の飲食店と中小の生産者を結ぶことを目的とし、新鮮な食材を適正価格で流通させるためのシステムですので、「規格が揃った食材を大量に最安値で仕入れたい」といった需要には対応していません。
また、2020年6月現在では配送エリアが東京都心に限られています。
開始当初は農産物の流通に特化したサービスでしたが、その後も同様に畜産物を扱う「MEAT by SEND」、水産物を扱う「SEAFOOD by SEND」と、サービス範囲を拡大してきました。
今後も、機械学習を利用した需要予測の精度向上、配送センターの移転・拡大による対象エリアの拡大など、さらなる発展も視野に入れられているとのことです。
飲食店と生産者のよりよい関係を支援する新時代の流通プラットフォーム「SEND」への期待が高まります。