オリンピック特需や国家のインバウンド施策による外国人観光客の増加、Airbnbや民泊などによる宿泊体験の変化などで宿泊業界も大きく変化してきています。
その中で、ダイナミックプライシングやスマートチェックイン、PMSなどでの予約管理などデジタル化が進んできていますが、地方部のホテルや小型で家族経営のホテルなどでは未だ導入されていないところも多いのが現状です。
そのようなホテルや旅館は慢性的な人手不足に陥っており、デジタルトランスフォーメーションを進めようにもITリテラシーの低さなどから導入にいたらず、人手不足の問題を解決することができません。
今後少子高齢社会の進展に対し、デジタル化によって消費者に新たな顧客体験がもたらされると同時に、事業者側にも新たなビジネスチャンスが生まれています。
宿泊業界がどのように課題に立ち向かっているのか、またどのように取り組みが行われているのかを見ていきます。
宿泊業の省人化や効率化が必要な理由
省人化という言葉をよく目にしますが、業務を見直し、工程の無駄を省いて、人員を削減することを指し、各産業でのデジタル化が進展するに従い、最新のテクノロジーを駆使して、業界特有の課題を克服しようとする試みが多く見られるようになってきました。
よく似た言葉では省力化があります。業務を見直し、工程の無駄を省くとこまでは同じですが、省力化はあくまでも作業能率を上げることが目的であり、人員を削減させることではありません。
宿泊業界の場合、好調なインバウンド需要や、東京オリンピック・パラリンピック、大阪での万博開催など、ホテル需要は一段と高まっています。
また、「改正旅館業法」や「住宅宿泊事業法」の施行により、民泊という新たなビジネスモデルが生まれるなど市場全体が成長段階にあります。
しかし、高まる需要に対し部屋の供給数や従事する人材が追いついていないのが現状です。
部屋の供給数自体は大規模・中小規模含め、ホテルの建設ラッシュが続くと予想されていますが、人材不足への取り組みは急務です。
宿泊業の省人化の事例
すでにIoTを用いた省人化として一般的なものは、チェックインを機械化した無人フロントや、スマートフォンやタブレット端末を用いたルームキーサービスなどがあげられます。
株式会社リクリエでは、大分県別府市に無人スマートホテル「GRAND BASE BEPPUEKIMAE」をオープンし、ipadを使ったチェックインシステム「tabiq」を利用し、無人でありながら安全にスマートキーを受け渡すことができます。
同機能では、カメラ機能によるパスポート情報の確認や取得が可能の他、ビデオ通話も可能になっています。
and factory株式会社では、宿泊施設向けの客室タブレットサービス「tabii」を展開し、館内案内や、周辺グルメは勿論、飲食店・アクティビティ予約や多言語対応など様々なサービスを可能にしています。
ロボット活用では長崎ハウステンボスで世界初のロボットホテルとして注目を浴びた「変なホテル」があり、顔認証活用例では南紀白浜地区をモデルとして、空港から宿泊、更に現地での決済まで可能にしたNECの顔認証システムが注目を集めました。
これら最新技術の活用により、得られるメリットとして、以下のものがあります。
- 業務効率化・手続きの簡素化
- 人員・コスト削減
- 宿泊客の満足度向上
- インバウンドへの対応が可能
考えられるデメリットとしては
- コストの高さ
- ロボットの安全性への懸念
- 宿泊客・従業員のITリテラシー不足
といった点が挙げられます。
しかし、クラウド型のサービスも進んでいることから、導入費用を抑えたサービスも増えてきており、中小規模の宿泊施設でも取り入れやすい形が増えてきています。
業界全体の課題に対して、最新技術を用いて対応しようとしており、今までは人による「おもてなし」という部分が注目されてきた宿泊業界ですが、最新の技術によってサービスの質が大きく変わるかもしれません。
従来の細やかな気づきや、おもてなしの心を持ちつつ、柔軟に技術を導入し、さらなるサービスの発展につながることを期待しています。