スマートホテルや民宿、外国人客の増大などにより宿泊業界も大きく変化してきています。
ダイナミックプライシングやスマートチェックインなど新しいテクノロジーを駆使し、売上の向上やホテル運営の業務効率改善も同時に進んでいます。
その宿泊業界で次のテクノロジーとして注目されているのが、ロボットの活用です。
今回は宿泊業でのロボットの活用の仕方と事例を紹介します。
宿泊業でロボットの活用が期待される理由
現在、日本の産業の中で課題となっているものに人手不足があり、中でも宿泊業界では、人手不足や人件費高騰により、存続の危機に追い込まれる企業も少なくありません。
宿泊業界は好調なインバウンド需要に支えられ市場規模が拡大しており、東京五輪開催も追い風になって、今後もホテルの建設ラッシュが続くと予想されます。
それに対して、現場で働く人の数は増えておらず、宿泊業界は離職率も高く、慢性的な人手不足の状態になっています。
宿泊業界は他の業界よりもIT化やデジタル化が遅れていると言われており、今でも予約管理などを手書き台帳で実施しているホテルも地方などにはたくさんあります。
宿泊業界のデジタルトランスフォーメーションが遅れた背景には、ホテルオーナーの高齢化のためITリテラシーが低いことや、デジタル化しなくてもホテル運営に大きな支障がなかったため、必要に迫られなかったため、変革が遅れていました。
人事不足の問題とデジタル化の遅れの問題を解決する手段として、ホテル運営管理システムのPMS(Property Management System)やスマートチェックインのシステムなどが導入されました。
これらのソフトウエアの導入で効率化ができるようになり、次はロボットを導入して「人の仕事をロボットが行う」フェーズとなります。
宿泊業におけるロボット活用事例
2015年、世界初のロボットホテルとして大きな注目を集めた「変なホテル」がオープンしました。
一流ホテルのようなグレードではなく、ローコストホテルのモデルケースを作ることを目的として事業がスタートしました。
サービスロボットの導入自体が珍しかったこともあり、スタート直後から大きな注目を集めロボット目当ての宿泊客を取り込むことにも成功しています。
ロボット導入自体が新たな顧客体験を創造したと同時に、従業員の大幅な削減にもつながったケースです。
同ホテルでは「ロボットができない仕事を人間が行う」として、人とロボットが協働しています。
トラブル対応で人がバックアップできる体制をとっており、サービス面での不安を解消しています。
業務においても最終的な判断や、仕上げの部分は人間が行い、業務品質の向上と責任の担保が取れる体制となっています。
宿泊業でのロボットのメリットデメリット
宿泊業でのロボット導入によるメリットとしては、24時間365日の稼働できることです。ホテル運営はチェックインやチェックアウトの対応や、顧客サポートなど深夜に業務が発生することがあり、常時受付に従業員を割り当てなければなりません。
深夜帯業務など、負担の大きい時間を代替することで、労働環境の改善や人件費削減が期待できます。
他にも、多言語対応できるため、インバウンド対策が可能で、言葉の壁をロボットを用いることで解消できます。外国人の旅行客が増えている中で、ホテルのサービスレベルを担保するには外国での対応が必須となります。上記の「変なホテル」のように、ロボットが見世物となって集客できる可能性もあります。
反対にデメリットとなるのは初期費用や運用費用の高さを懸念されます。
他にもロボットによる接客を望まない人の存在や親切で丁寧なサービスを魅力にしている施設などは不要に感じます。
宿泊業はサービス業でもあり、人の温かみがあり、お客様それぞれに合わせた対応ができますが、ロボットの場合は全ての対応がオペレーションで統一されるため、個別対応やイレギュラー対応は難しくなります。
ロボットは単体で起動することはできず、人間と共存するから役割を分けるからこそ能力が発揮されます。
そのため、ロボットと一緒に働く従業員の教育やモチベーション管理も大事になります。
業界の現状やロボット活用の事例から考えると、ホスピタリティやサービスを重視する宿泊業界では、完全な自動化は現実的ではないかもしれません。
しかし、人とロボットが共存しながら働く、それにより未来の新しい働き方を生み出す可能性を秘めています