数年前からSaaSの進展は著しく、小売業界にもPOSシステムや店舗運営管理ツールが従来のパッケージ型ソフトからSaaSに移行してきています。
従来、デジタルトランスフォーメーションは他の産業と比較し、導入や発展が遅いて言われていましたが小売業ですが、今は続々とSaaSを導入する店舗が増えています。
SaaSを小売業に当てはめた言葉でRaaS(Retail as a service)という言葉も最近目にする機会が増えました。
本記事では小売業のSaaSの特徴と導入事例について紹介します。
小売業でのSaaSとは
SaaSとは「software as a service」の頭文字からなる言葉で、「サービスとしてのソフトウェア」を意味します。
ユーザーが必要な機能を要望に合わせてサービスとして利用できるソフトウエアまたはそのサービスの提供を意味します。
現代のアプリケーションにおいて、事実上のスタンダードとなっているのがクラウド型のサービスであり、インターネットを介して様々なサービスを受けられると同時に、利用する分だけ料金を払うサブスクリプション型のサービスが主流となっています。
例では、法人向けサービスではグーグルのGmaliやマイクロソフト社のOffice365やAWS、消費者向けサービスではNetfilxやApple musicやAmazon Primeなど生活に身近なサービスがたくさんあります。
小売業界ではタブレットを使用するモバイルPOSや店舗運営システムやAIの技術を活用した画像認証などでSaaSが導入されています。
また、近年では防犯カメラのSaaS型や店舗集客のマーケティングツールでもSaaSが増えてきています。
上記のように今までは初期費用で物やシステムを購入していましたが、初期費用を抑え、継続して利用できるようなSaaSが小売業界にも浸透してきています。
小売業でSaaS導入のメリット・デメリット
SaaS導入のメリットは、導入・設置・開始が簡単で素早く開始できることです。
ソフトウェアのインストールが必要なく、アカウント取得により簡単に始めることができ、従来のよう環境構築に伴うイニシャルコストも抑えることができ、従量課金制のためランニングコストの計算も簡単です。
そのため、新規開店のお店などで出店資金を抑制することができます。開店時は内装費や在庫の仕入れなど多額の費用がかかりますので、設備面で費用を抑えることが可能です。
クラウドサービスはインターネット上のサービスである以上、ネット環境があればどこでもアクセスが可能になり、バージョンアップなどのシステム管理も、ベンダー側が行うため管理の手間がかかりません。
多店舗経営している場合などはどこからでも確認できるので、店長やオーナー様にとっては非常に助かる機能です。
小売業の場合、店舗の在庫数は日々変化しますので、売上や在庫状況に合わせた対策を取りやすくなります。
反対にデメリットとしては、個別の環境に合わせたカスタマイズができないことであり、アプリケーションに対して会社の業務を合わせていく形になります。
また、ベンダー側のメンテナンスや故障対応等でアクセスが制限されることがあり、業種によっては大きな影響を与えることになります。
データ管理がクラウド上である以上、セキュリティリスクに対しても考慮が必要になります。そのため、導入側の運用時のルール策定が非常に重要になります。
加えて、小売業で従事する人たちはITリテラシーが高いと言えないの現状です。そのため、導入に対する反対意見や摩擦、導入後にサービスをフル活用できるかの懸念は残ります。
小売業のSaaS導入事例
小売業界での導入事例として、在庫問題のフォーカスを当てたフルカイテン株式会社のサービス「FULL KAITEN」が挙げられます。
小売企業の宿命として、売上を増やすためには在庫を増やす必要があり、不良在庫も発生してしまうというジレンマがあります。その課題を解決するべく、売上の増加と在庫削減を両立させるシステムで販売・在庫データから、今後の売上予測や在庫量を予想することができ、多くの企業で導入が進んでいます。
他にも株式会社ABEJAでは、蓄積されたデータをAIを用いて分析し需要予測や顧客分析に活用しています。
店舗のカメラで撮影した映像をAIを用いて分析し、来店客の性別や属性・固定客か否かを判別し、それをPOSデータと組み合わせることにより、顧客属性を推定したり、何割の顧客がコンバージョンするか等を予測することが可能になります。
店舗のカメラを用いて行うため、導入される現場側のハードルが低く、従業員・顧客両方がAIを意識することなく、スマートな売り場を実現しています。
SaaSビジネスは企業のクラウドサービスの拡大に伴いより多くのサービスが今後もローンチし、複数のアプリケーションとの連携が可能になるなど、より多くのサービスがSaaS上で提供されることになります。
まだまだ発展途上段階のビジネスですが、小売業の人手不足や集客の課題を解決することも多いでしょう。