中国のAmazonとも呼ばれるAlibaba(アリババ)はECを中心にクラウドやペイメントなど多岐にわたりサービスを展開しています。
中国の小売業やインターネット業界を牽引するアリババがECの市場が成熟したこともあり、新しい小売業の未来を提唱しました。それがニューリテールという考え方で、中国中心に世界中で議論されています。
小売業界のデジタルトランスフォーメーション後進国の日本では未だニューリテールの考え方は浸透していませんが、無人化店舗やストアDXを推進する中で必ず必要な考え方となってきます。
今回はアリババが提唱するニューリテールの概念についてお伝えします。
アリババのニューリテールとは
「ニューリテール(新しい小売)」は、アリババグループが提唱するコア戦略の1つで、モバイルインターネットとデータ技術を使用することで小売業界のデジタル変革を実現し、オンラインとオフラインを統合することで新しい体験を消費者に提供することです。
このニューリテールの取り組みを推進するため、アリババグループはさまざまなパートナー企業と提携や協働をして取り組んでいます。
たとえば、小売業者、販売チャネル、物流会社と連携してオンラインとオフラインの融合のための最適は方法を模索し、購入から配送までの効率化・省人化・DX化を行なってきました。
アリババのLST
アリババのLST(Ling shou tong)という仕組みがいま中国で広がりつつあります。
LSTとは「小売業のつながり」を表しており、例えばコンビニを全国展開するのではなく、既存の個人商店を「コンビニ的発想で経営をする店」に変更するという考え方である。
LSTは業界最大のB2B配信プラットフォームであり、中国の農村部や地方の小さな家族経営の小売店とコンビニなどと同様に日用品を販売しています。
LSTの導入を通じて、小規模小売業者と消費財ブランドの両方がビッグデータを使用した予測に基づいて、効果的な流通、在庫管理、およびプロモーションを実施できるようになります。
そうすることで、中国の人口の80%以上が住んでいる地方都市の小さな個人商店への販売チャネルが拡大できます。
LSTを利用するメリットは「サプライチェーンの効率を向上」「データを活用したマーケテイング」で、2016年の年末に開始されたLSTですが、2020年現在で130万店以上の小規模小売店で使用されています。
アリババのフーマー
アリババのニューリテールの実現のためにもう一つ鍵になるサービスがあり、野菜や魚や肉などの生鮮食品を扱う無人スーパーマーケットのフーマーです。
アリババのテクノロジーを活用して、小売、物流、サプライチェーンを組み合わせ、さまざまな「食品」に関する顧客からの需要に対応します。
オフラインやオンラインの双方で中国の都市部に住むお客様にシームレスなショッピング体験を提供します。
このようにして、EC時代の終焉を先取りしたアリババは、伝統的な中国の小売業者に継続的に投資してきました。
ネットショップと実店舗の組み合わせ
人工知能(AI)とビッグデータテクノロジーを使用することにより、デジタル化に遅れをとっている従来の小売業界の構造を変革して、オンラインとオフラインの統合を推進しています。
その背景は、EC市場の成長の鈍化にあります。
中国の小売業界では、中国のEC比率は15%に達していますが、成長率は2015年から鈍化しています。14億人のうち、約10億人はインターネットユーザーで早く広く拡大しましたが、更に市場を拡大するには、高齢者、子供、農村地域などが利用し、各地域に普及させる必要があり、これには時間がかかります。
もちろん、ECがある程度普及すれば、市場競争はさらに激しくなります。
以前は、ECプラットフォームで内での広告スペースを販売することで収益を上げていました。
オンラインユーザーの数の増加が鈍化すると、広告単価が低下し、費用対効果が低下します。
ECサイトで出店しても運営コストが高く、広告で採算が取れなくなり、物を売りたいという観点から見ると、ECの魅力は薄れてきています。
ニューリテールは、インターネットとデータテクノロジーを用いることで、小売業のデジタルトランスフォーメーションを実現し、オンラインとオフラインを融合させた新しい消費体験することで、今後も目が離せません。