D2C

D2Cブランドを支援するNeighborhood Goodsのビジネスモデル

小売業のデジタルトランスフォーメーションは進み、店舗の効率化や省人化またはECなどの販売チャネルのインターネット化があります。その中で、ECサイトの売上は今後も拡大傾向に進むと想定されますが、その際に重要になるのが、リアル店舗との付加価値の再定義です。
食品などの最寄り品については商品をその場で購入することが必要ですが、衣料品などの買回り品については店舗で見てECサイトで購入するという消費者の行動が一般化してきている中で、ECサイトを中心に考えた場合にはリアル店舗を異なる付加価値提供の場として捉える動きがあります。「モノ売りの場としてのリアル店舗から、顧客体験を売る場」への変化です。

その付加価値の転換を実現している例が、アメリカの「Neighborhoods Goods(ネイバーフッド・グッズ)」という2017年にアメリカのテキサスで創業したスタートアップ企業です。
この企業は、「D2Cブランドのデパートメントストア」と呼ばれています。D2Cブランドとは、自社のECサイトから直販事業を中心にブランド運営をしている“Direct to Consumer ”という新しいビジネスのモデルを指し、国内では、「ALL YOURS(オール ユアーズ)」というアパレルブランドが、自社で製造から販売までを実施するD2Cビジネスモデルを採用して自社ECサイトでの販売を行っているような例があります。

そのNeighborhoods Goodsを紹介します。

Neighborhoods Goodsのビジネスモデル

同社のCEOであるマット・アレキサンダー氏が、2014年にテキサスで開催した「Unbranded」という地元の企業やアーティストに対するフリー出店スペースを始めており、このアイデアをD2Cブランド向けに転用したのが、「Neighborhoods Goods」の始まりです。
D2Cブランドにリアル店舗の場を提供し、そのブランドからの展示費用と販売手数料をもらうことで成立しています。
リアル店舗を持たないD2Cブラントにとって、新商品が本当に消費者に受け入れられるのか、テストをする場として活用できることになります。D2Cブランドのデパートメントストアと呼ばれているのはそのためです。

Neighborhoods Goodsが特徴的なのは、「売上」ではなく「顧客体験」の最大化を重視していることで、店舗スタッフは商品を売ることよりも、そのブランドのよさを伝え消費者に喜んでもらう「ストーリーテリング」の接客方法に特化しています。
また、デジタル活用も進んでおり、セルフレジ・AIカメラ・チャット接客を活用した付加価値の提供を行っています。

注目のD2Cの全てを解説!初心者のためのD2C入門!D2C型のビジネスモデル、特徴、メリットデメリットなど、これからD2Cに参入や関わる人を対象にまとめています。...

Neighborhoods Goodsの魅力

消費者からNeighborhoods Goodsの魅力はECサイトで見ている商品単体ではなく、ライフスタイルのどのようなシーンで商品を活用できるのか、価値を提供してくれる点です。
店内にはアパレル雑貨などのD2Cブランドが展示されており、消費者がイメージしやすい「新しいライフスタイル」を提案する店舗スタッフがいて、対象商品にかかわるイベントが毎日開催されているおり、消費者が楽しめるスペースで消費者が店舗に頻繁に来店するモチベーションを提供しています。

一方で出店ブランドからのNeighborhoods Goodsのメリットはリアル店舗に対する機動性とマーケティング活動が可能になるメリットを提供しています。
そもそも、店舗を自社オープンする為には時間もコストも固定費として発生しますので、機動的に活用できるリアル店舗の場があることは出店ブランドのメリットです。
また、Neighborhoods Goodsの場を通して、テストマーケティング活動が可能となます。店内には、AIカメラによる動線分析が行われているため、消費者がどの商品に興味をもったのかデータとしてのフィードバックを受けることが可能です。

日本でも類似の取組みがあり、渋谷パルコの実験型のショールームストア店舗「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」 です。CAMPFIREとパルコの共同運営のショールームとなっており、スタートアップ企業や発売前製品のコンセプトモデルなど常設型ショールームストアになっています。
ここでは、天井にはカメラを設置して来店者を解析しており、展示製品に関心を寄せた人数や属性、店舗内の行動パターンなどの回遊データを出展者にすばやくフィードバックし製品開発に役立てるコンセプトとしています。

今回はD2Cブランドのデパートメントストアとして新しい顧客体験を提供するNeighborhoods Goodsの取組みについてご紹介しました。
同社はリアル店舗を「売る場所」ではなく、「ブランディング」「マーケティング」「地域コミュニケーション」の場といった新しい価値を提供することで、消費者・D2Cブランド双方にとって魅力ある場となっています。

似たようなビジネスモデルにB8ta(ベータ)があり、日本にも進出予定です。

ECサイトのマーケットは、コロナショックが解消された後も継続して拡大していくことでしょう。その中で、リアル店舗の場でしか提供できない価値をどの様に創出していくべきか、各社が考慮すべき課題となります。ご紹介した、Neighborhoods Goodsの取組みは、その課題を解決する上で、キーモデルの1つになりえます。

【小売業×IT】リテールテックとは?小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)小売業とテクノロジーを掛け合わしたリテールテックは接客、POS、キャッシュレス、販促物、ECなど幅が広く、それぞれの分野について説明しました。...