FinTechやHRTechなど「業界×Tech」があらゆる業界で生まれており、ホスピタリティ産業やホテル・民泊の宿泊産業でも「ホスピタリティテック」「ホテルテック」という言葉が業界内で用いられるようになってきました。
このような宿泊業界やホスピタリティ産業は人手に依存する構造で、デジタル化やIT化の導入が遅れていましたが、昨今の人手不足やインバウンドによる需要の増加に伴い、テクノロジーの力が必要になり、一気に導入が進みました。
この記事では宿泊業やホスピタリティ産業とテクノロジーを掛け合わせた、ホテルテック・ホスピタリティテックについて紹介します。
ホテルテック・ホスピタリティテックとは
ホテルテックは「ホテル」と「テクノロジー」、ホスピタリティテックは「ホスピタリティ」と「テクノロジー」を掛け合わせた言葉です。
主にホテルや旅館や民泊などの宿泊業界に使用されて、AI(人工知能)やIoT(Internet pf Things)やビッグデータやロボットなどの技術が該当します。
宿泊業にテクノロジーを活用することで、「売上・集客の向上」または「省人化・無人化による効率化」のどちらかの効果が期待されます。
日本の宿泊業界では、インバウンドで宿泊者は増えており、需要が増加する一方でホテルや民泊が乱立して競争が激しくなっています。
加えて、少子高齢化による後継者問題、人口減少による採用難など人材に関する悩みが絶えません。
労働力の確保が難しいからこそ、効率よく利益を最大化させるためにテクノロジーの力を必要とし、宿泊業界のデジタルトランスフォーメーションのチャンスと捉えることができます。
2018年に旅館業法が改正され、無人ホテルの運営ができるようになりました。
緊急時の駆けつけやビデオカメラによる本人確認など一部制限はありますが、受付やフロントを設置しなくても旅館やホテルを運営できるようになりました。
この旅館業法が改正が無人ホテルの運営を後押しし、無人チェックインやスマートロックなどの宿泊業界でのテクノロジーの利用の加速に繋がっています。
日本ではホテルテックは認知されたばかりですが、中国やアメリカでは一歩先を行っています。アリババがオープンしたホテル「FlyZoo Hotel」では、エントランスやチェックインは無人で行い、鍵の代わりに顔認証や指紋認証でホテルの部屋やジムの施錠を解除できます。
客室にはスマートスピーカーがあり、そこで注文やオーダーをするとロボットが客室まで届けてくれます。
ホテルテック・ホスピタリティテックの種類
宿泊業とテクノロジーを組み合わせると言っても、ホテルなどの運営にはやることや業務がたくさんあります。
そのため、ホテルテックやホスピタリティテックと一言でまとめるのが難しく、業務ごとに区分する必要があります。
業務ごとでテクノロジーの種類や参入企業も異なります。
予約管理
予約管理の項目では「OTA」「ダイナミックプライシング」の2つに分けることができます。
「OTA」はOnline Travel Agencyの略で楽天トラベル、じゃらん、Booking.com、Expedia、Airbnbなどがあります。
これらに掲載することで効率的に集客をすることができ、売上UPに繋がります。
顧客情報をデータベース化し、効果的なマーケティングを行うことも可能です。
「ダイナミックプライシング」は宿泊料金を状況に応じて最適化する仕組みのことです。
日本ではあまり参入企業が多くないですが、宿泊業や観光業は季節変動が大きい業界です。
繁忙期や閑散期の宿泊施設の稼働状況に合わせて、価格を変動させ、繁忙日には高めの価格設定をし、閑散日には低めの価格設定をすることで売上の最適化と最大化を実現します。
ダイナミックプライシングはAIが過去の販売実績を記録して、需要を予測し、RevPARが最大化するための価格を算出します。
宿泊業のダイナミックプライシングは株式会社空が一歩進んでいます。
接客・チェックイン
接客・チェックインでは「チェックイン」「リモート接客」「スマートロック」「客室IoT」の4つに分けることができます。
「チェックイン」はあらゆるテクノロジーがあります。
無人チェックインといとことで言っても、「フロントにタブレットを置き、宿泊者が自らチェックイン業務を実施するタイプ」や「顔認証や指紋認証などバイオテクノロジーを活用してチェックインをするタイプ」などに分けられます。
無人チェックインにする場合は、現地での支払いや決済は認めておらず、クレジットカードなどで事前払いするのが一般的です。
「リモート接客」は「AIチャットボット」と「遠隔接客」に分けることができます。
AIチャットボットでは、宿泊者が質問やヘルプが必要なときにアプリなどで質問するとチャットやLINEなどで回答してくれます。
「遠隔接客」ではチェーンホテルなどで用いられますが、フロントにはスタッフはいませんが、電話などを通じて遠方にいるホテル従業員が対応してくれます。
コールセンターなどで対応を一括することで、接客対応の手間を省いています。
「スマートロック」は鍵を使わずにQRや指紋などで鍵を開ける仕組みのことです。
クラウド上で全てのデータを管理するため、チェックインや外出の時間などまでチェックすることができます。
「Akerun」「Ninja Lock」「Keycafe」などが有名なスマートロックの企業です。
最後に「客室IoT」は、客室で宿泊者の困りごとのサポートをします。
客室には「宿泊のガイド」のような冊子が置いてあり、ルームサービスや近隣情報の記載があります。
しかし、IoTを使うことで冊子での準備ではなく、スピーカーやタブレッドが対応して、宿泊者の要望に答えます。
紙でないため情報の更新などはすぐにでき、ホテルにとっても便利です。
また、電話の機能なども兼ねているため、一石三鳥で大活躍します。
客室にタブレットなどを設置する客室IoTでは「crotta」「Tabii」「MOT/Hotel Phone」が有名です。
運営管理
ホテルを運営するために顧客情報や客室情報などをクラウド上で管理を行います。
宿泊業界ではPMS(Property Management System)と言われており、このシステム一つでホテルや民泊の運営の全てを行えると言っても過言ではありません。
PMSには顧客管理をする機能も搭載されており、CRMで一人一人に合わせた集客が可能です。
ホテルや旅館や民泊など業態によって、PMSの参入企業も異なります。
ウェアラブル端末を使ってスタッフの作業を監視したり出勤状況の把握にも役立てたい
宿泊業の無人化と省人化
ホテルテックやホスピタリティテックの目的の一つに「無人化・省人化」です。
効率化するときによく目にする言葉で「無人化」と「省人化」がありますが意味が異なります。
無人化は人をゼロにして機会のみで対応することで、省人化は人をゼロにせず機械と人の組み合わせで行います。
省人化では本来5人で行なっていた業務を3人で行うことなど、人数が少なくするためにテクノロジーを活用します。
ホスピタリティという言葉にあるように、この業界では人によるサービスが顧客満足に大きく繋がるため、全てをテクノロジーに置き換えるのは難しいのが現状です。
テクノロジーが活用できる箇所は代替し、人にしかできないサービスやおもてなしは人が行うことがベストです。
ホテルテックやホスピタリティテックについて説明しましたが、今後さらにこの業界にもテクノロジーは普及してくると思います。
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