「D2C」という言葉が、ビジネス雑誌やスタートアップ界隈で話題の単語となっており、新たなトレンドになると予想している人は多いです。
しかし、まだ浸透していない言葉であるがゆえに、意味を正しく理解できていないケースもあります。
この記事では「D2C」について、説明します。
D2Cとは
D2Cとは「Direct to Consumer」の略で「商社に対して直接商品を販売するビジネスモデル」のことです。
今まで企画製造するメーカー、販売を行う小売店やECプラットフォーム、広告のサポートをする広告代理店などにそれぞれの分野を各企業で行なっていましたが、D2Cでは企画・製造・流通・広告などを自社で一気通貫するモデルです。
D2Cは仲介会社(広告代理店、小売店など)が介在しないのが特徴で、真の意味でtoCであり、商品やサービスがD2Cの鏡としてピュアに反映されるため、Direct to Consumerと呼ばれています。
近年、イオンやローソンやコストコやAmazonなどの小売業やECプラットフォームが自社ブランド(プライベートブランド)として、商品開発を初めています。
プライベートブランドとD2Cの違いは、オンラインとオフラインの点で、プライベートブランドはマス広告で店舗で販売する事を主として、D2Cはインターネットでの顧客との関係構築で自社ECで販売することを主としています。
D2Cが話題の理由
企業側にとっては、小売店を介さずとも商品が売れる環境が整ったということです。
テクノロジーの発達により店舗ではなくECで買い物するようになり、直接商品を見なくても購入するようになりました。そして、SNSの発達によって適切な顧客に対して効率よくマーケティングやブランディングができるようになりました。
これらが日常化したことで、D2Cのビジネス構造が成り立つようになりました。
D2Cの特徴としては、サプリや食品やアパレルなど有形の商品を提供するビジネスモデルで、商品の企画・製造・流通・広告を一貫しておこなう新規性と事業の複雑性の高さからビジネスとして注目を集めています。
物販をする企業ではあるものの、デジタルファーストとして、IT企業と定義することも多く、理由はインターネットを活用したマーケティングやデータを活用した商品企画など、ITを軸に物作りをしているからです。
マーケティングではOMO戦略やCRM戦略を積極的に活用しています。
D2Cのターゲット顧客は30歳以下で、インターネット・SNSネイティブ世代になります。
そのため、TVCMなどを活用しなくても、SNSを通じてその世代にアプローチする事ができ、店舗での販売など他の流通経路を確保する必要がなく、直接商品を顧客へ届けることができるようになりました。
ミレニアム世代の消費が「モノ」から「コト」に変わったことも大きな要因の一つです。
若者のブランド品離れや車離れなどの言葉があるように、ミレニアム世代は高価なものなどには消費しなくなり、その代わり共感するものや体験にお金を使うようになりました。
そのような背景があり、D2Cは自社で企画・製造・流通・広告を一貫して行なっているため、それぞれのブランドのこだわりやストーリーを表現しやすく、そこに共感することが商品を購入する理由になってきています。
D2CとBtoB、D2CとBtoCの違い
時代の流れとともに新しい言葉が生まれて、その言葉との違いがわからなくなる事があります。
BtoBやBtoCは「誰と誰の取引であるか」を明確にした用語ですが、D2Cは取引形態だけでなく、事業の構造やバリューチェーンを表した言葉です。
D2CとBtoCの違い
「BtoB」とは「Business to Business」の略で、企業が企業に対して、商品やソリューションを提供や販売することを指します。
BtoBは顧客ターゲットが企業に限定されているため、マーケティング活動もTVCMなどのマス広告はあまり行いません。
また、企業利用のため、各サービスの単価も高く、アフターサービスなどもしっかりしています。
D2CとBtoCの違い
「BtoC」は「Business to Consumer」の略となり、企業が個人の消費者に対して商品やサービスを提供や販売することです。
BtoCの例としては、メーカーや小売業があり、消費者にいかに選んでもらうために認知度の向上が重要で、マス広告が有効です。
テレビや新聞、雑誌、看板広告などを介して、多くの消費者に商品やサービスの魅力を伝えます。
D2Cのメリット・デメリット
D2Cは新たなビジネスモデルとして注目されていますが、メリットデメリットの両方があります。
D2Cのメリット
D2Cのメリットは「顧客との関係構築」「データの収集」「高効率」です
・顧客との関係構築
企画から販売まで仲介業者や代理店を挟まないため、会社の全ての姿勢や想いやこだわりが商品に表れます。
マーケティングにおいても、SNSを中心にブランドストーリーや商品づくりのこだわりを伝えることで、顧客に対して商品のロイヤリティを持っていただく事ができます。
商品を使用した顧客からフィードバックを収集することもでき、それをマーケティングや商品づくりに反映する事ができ、より顧客の要望に答えた商品を提供できるようになります。
ユニークなカスタマイズ商品を提供することも可能で、古い産業の中で独自の競争力を得る事ができます。
マーケティングではアンバサダーやインフルエンサーの活用などを積極的に行う事ができます。加えて、自社ECでは制限を受けずに独自のキャンペーンやマーケティングを展開できます。
このようなマーケティングを行うことで消費者の生の反応を得ることができ、それを商品化します。
顧客は商品やブランドを一緒に作っている意識が生まれ、共創性が高くなり、さらなるフィードバックやイベントなどに繋がります。
そして、ブランドロイヤリティを高めることで、口コミで商品やブランドがどんどん広がっていきます。
・データの収集
自社で一気通貫して行うため、顧客情報や商品情報を細かく管理する事ができ、データを元に商品開発やマーケティングに繋げる事ができます。
顧客のメールアドレス、SNSのプロファイルなどは、D2C企業がお客様と消費行動へフィルターや制限なしにアクセスできます。
マーケティングでは新商品の案内やイベントへの招待など、CRMで顧客に合わせた広告を行う事ができ、ブランドロイヤリティを高める事ができます。
・効率的
自社で企画・製造・流通・広告を行うため、費用面も時間面の効率的になります。
関係者が多いほど意思決定に時間が掛かりますが、全てを社内で行うためクイックに物事の判断をし、行動に繋げる事が可能です。
そして、仲介業者や代理店が入らないため、中間マージンや手数料の支払いが不要のため、高い利益率の事業にすることは可能です。また、消費者に対しては、他の類似商品よりもコストが安い分、低価格で提供できます。
例えば、ECプラットフォームのAmazonに出店した場合は、毎月4,900円の登録料に加えて、購入額の約8〜15%が販売手数料として発生します。
楽天では初期出店料・月額出店料・システム利用料・クレジットカート決済手数料・アフィリエイト手数料などの手数料が発生します。
Amazonや楽天は集客力は高く売上UPの効果は見込まれるものの、その分手数料が高く利益率が低いですが、D2Cではこのような手数料を省くでき、高い利益率を保つ事ができます。
小売店の店舗を構える必要のなく、毎月の地代家賃の固定費などは不要でその分利益率が高くなります。地代家賃は小売業においての3大コストでその一つを抑えることができるのはPLでも大きなインパクトになります。
一方で、D2Cはスタートアップなどの小さな企業が多いので、製造などは小ロットでの発注になります。その場合は、大手ブランドと比較すると一点あたりの製造コストが高くなります。
また、自社ECを立ち上げた場合などはクレジットカード会社に決算手数料などは発生しますので、全ての手数料がなくなる訳ではないのです。
D2Cのデメリット
・初期コストが膨大
D2Cはビジネス構造上は自社で一気通貫で仲介業者や手数料を省く事ができますが、全てを自社で行うためには、それを社内で実施できる人材や体制が必要です。
そのメンバーを揃えると毎月の人件費で膨大になります。また、在庫を保管する倉庫料なども費用としては大きくなります。
D2Cは物販のため、消費者からお金が支払われる前に商品を作る必要があり、キャッシュのインとアウトの時期が離れており、キャッシュフローが厳しくなります。
また、在庫を売り切る事ができない場合はコストとなりますので、経営が一気に厳しくなります。
このような問題を回避するためにD2Cでは受注販売やクラウドファンディングを活用した予約販売の形を採用する企業も多いです。
・バリューチェンが複雑
企画・製造・流通・広告を自社で行う場合には、取引先や関連部署が多くなり、フローが複雑化します。
バリューチェンが長く複雑だからこそ、参入障壁が高くや成功確率が低いです。
「企画できる人」「広告だけできる人」は市場には沢山いますが、物作りや小売や物流やサプライチェーンの全てをできる人材はほぼいません。特にD2CなどIT企業の若い人でD2Cに必要な全スキルを身に付ける人は日本中探しても皆無に近いです。
以上がD2Cの説明でした。
最近は芸能人やスポーツ選手のD2C市場への参入、インスタグラムから生まれたブランド、大手企業のD2C化などがあり、D2Cの認知度が上がり競争も高くなっています。
D2Cの成功事例を「ウイメンズアパレル」「メンズアパレル」「コスメ・化粧品」「食品・サプリ」「香水」など商品別にまとめています。
また、店舗でD2Cブランドをチェックする場合にはB8ta(ベータ)がオススメです。
しかし、消費者からするとD2Cか否かは購買動機には直接繋がらないため、顧客との関係の積み重ねと高い品質の商品作りは必要とです。