ここ数年にかけて、「D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)」関連銘柄が、株式市場の熱い注目を集めています。D2Cとは、メーカーが企画・製造した商品を問屋や小売業者などを経由せず、自社のECサイトを通じて消費者に直接販売するものを言います。特に、米国の株式市場ではD2C企業のサイト構築に関わり「アマゾンキラー」の異名もとる「Shopify(ショッピファイ)」が存在感を増しており、日本でも2019年に上場した同業態のBASEが脚光を浴びています。D2C関連企業は、アマゾン・ドット・コムや楽天など巨大ECモールに依存せず、自社サイトから直接販売することにより、利益率が高くなり、高い成長性が期待できます。世界的な注目を集めるD2C関連の企業に着目を当てた記事となっております。
消費者ニーズ取り込み急成長中のユニコーンが多数登場
「D2C」は、人工知能(AI)やデータ分析などの高い技術力とWebサイト、SNSを通じてマーケティングを行うことを言います。消費者への直接販売のスタイルに、「テクノロジー」という要素が強力に加わっている点が従来の直販との大きな違いとなっています。米国では、「メガネ」や「マットレス」といった差別化をしにくい商材を取り扱っても独自の世界観を背景にした作り込みによってブランディングを成立させ急成長するユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)と呼ばれる企業が出てきています。最近で大きな注目を集めた企業と言えば、ニューヨーク証券取引所にD2C関連のマットレス企業キャスパー・スリープが上場し注目を集めました。日本でも、D2Cに絡む多くの未上場のスタートアップ企業が話題を集めており、例えばメンズスキンケアのバルクオム(東京都港区)、オーダースーツのFABRIC TOKYO(東京都渋谷区)などがメディアでも取り上げられています。
米国にはアマゾンやイーベイ、日本には楽天やZホールディングス傘下のヤフーなど大手ECプラットフォームがあります。しかし、ECモールを使えば、集客などは簡単な代わりに、手数料などが収益を圧迫してしまいます。その一方、D2CではECサイトで消費者が直接商品を購入するため、購入時期や購入した商品といった消費者のニーズをダイレクトに把握でき、新たなマーケティング戦略に活用することで利益率を高められるといったメリットがあります。
ピアラやテモナなどD2C関連事業を展開
ワークマンは、楽天市場店を閉店して自社ECサイトに集中すると発表した。ウォルト・ディズニー・ジャパンも、ディズニーストアの楽天市場店を閉鎖し、アマゾンでの出品を終了させています。実店舗とECサイトの情報管理を統一することで機会損失を防ぐ「オムニチャネル」戦略や、企業と消費者を直接結び付ける「D2C」を推進する動きは、大手企業に加え中堅・中小企業、個人へと広がりを見せております。
こうしたなか、インターネット上のオンラインストア開設を支援するBASEなどの活躍は一層際立ってきております。D2Cを支える企業は、最近上場した会社も多く、楽天やヤフーに比べて今後の成長が期待しやすい面もあります。
例えば、D2C関連で注目できる企業に、ECマーケティングや広告事業などを展開するピアラが挙げられる。同社は、企業向けブロックチェーン事業の開発を行うSingulaNet(シンギュラネット、東京都港区)との資本・業務提携を発表しました。同資本・業務提携により、シンギュラネットが持つサービスや技術を活用することで次世代型サービスを提供していくそうです。ピアラはこれまで行ってきたヘルスケア、ビューティー、食品領域のマーケティング支援と、昨年から開始した悩み別データベースを生かして商品企画プロデュースを行うサービス「BEATMAKER(ビートメーカー)」に新サービスを組み合わせることで、商品開発から事業シミュレーション、マーケティング活動、D2Cまでをワンストップで対応できるとしています。
また、データを活用したマーケティング分析サービスを提供するMacbee Planetや、EC事業者向けにD2Cソリューションの提供を開始したテモナなどがあります。このほか、丸井グループは1月、D2Cのエコシステムを支援する新会社を設立しました。同社は20年以降、「デジタル・ネイティブ・ストア」戦略を本格化しているが、D2Cは戦略の要としています。丸井グループは、23年3月期までの7年間で合計300億円の投資を計画しているが、今後更に戦略投資の対象としてD2Cのスタートアップ企業に投資活動を展開するとしています。
Eストアーやコマースワン、マクアケなど要チェック
もちろん、ショッピファイやBASEと同様にECサイト構築関連企業への期待度は高い状態です。EストアーはSaaS型ECサイト構築システム「ショップサーブ」を提供しています。コマースOneホールディングスも同ECサイト構築システム「futureshop」を展開しています。インターファクトリーもクラウド型のECサイト構築サービ「ebisumart」で高い実績を持っております。
マクアケも要注目の1つです。同社は新製品の販売で消費者の反応をリサーチし、最初の顧客獲得を目的とする0次流通市場を展開するプラットフォーム「Makuake」を運営しております。クラウドファンディングを通じてD2Cなどのスタートアップ創設者や企業に、アーリーステージに必要な資金を集める機能を果たしています。特にコロナ禍で、新商品のデビューや買い物の場がオンラインへシフトする動きが続いたことを背景に、Makuakeの利用が浸透し20年9月期営業利益は前の期比4.1倍の5億1000万円に急成長している企業となっております。
今回ご紹介した企業の他にも、今年度も多くのD2Cに関連した企業がでてくるでしょう。今後もさらに拡大が見込まれるD2C市場から目が離せません。