D2CとSPAは、どちらもメーカー直販型のビジネスモデルが基本となっています。そのため、両者が同一のモデルと認識されていることも多いですが、その本質には大きな違いがあります。そこで今回は、混同されがちなD2CとSPAの違いについて解説していきます。この機会に、2つのモデルの違いをチェックしておきましょう。
D2CモデルとSPAモデルの特徴
まずは、D2CとSPAそれぞれのビジネスモデルの特徴について押さえておきましょう。
SPAとは?
SPA という言葉は、1986年に当時GAPの会長であったDonald Fisher氏により定義されました。SPAとはSpeciality store retailer of Private label Apparelの略称で、日本語では製造小売と呼ばれています。アパレル分野を中心に、企業が商品の製造から販売に至るまでを一貫して行うビジネスモデルで、「自社で製造したモノを自社で販売する」いわゆるメーカー直販型の形態として知られています。
例えば、大手ファッションブランドのユニクロやZARAなどはSPAモデルを採用した企業の代表格。消費者のニーズやトレンドを素早くキャッチし、自社で製造→販売することでスピーディーに商品を提供し、多くのユーザーを獲得してきました。
SPAモデルのメリットは、分業化することで発生する中間マージンが発生しない為、コストダウンが可能で消費者へ低価格の商品を提供できる点です。デメリットは、トレンド商品を大量生産する故に似たようなデザインの商品が増え他社との差別化が難しく、価格競争が発生した点が挙げられます。
D2Cとは?
D2Cとは、Direct to Consumerの略称です。D2Cは、メーカーや工場が商品を自社で企画・生産し、SNSなどで購買促進を行い、自社のオンラインストアやアプリで直接消費者に商品を販売するビジネスモデルです。そして、高品質な商品を低価格で販売することを重点においており、小売店を持たずに主にオンラインで商品を販売する特徴があります。
このモデルのメリットは、消費者が高品質な商品を低価格で購入できる点と、今までよりメーカーや工場が高い利益を得られる点が挙げられます。企業が企画・製造から販売に至るまでを一貫して担うメーカー直販型という点はSPAと同じですが、D2Cではトレンドや流行を追うのではなく、自社の哲学や世界観を重視しています。ECや店舗、SNSや商品に至るまで、ブランドで一貫した世界観を提供。「商品を売るのではなく、ライフスタイルを売る」という考え方はD2Cに共通する哲学で、ストーリーやブランドイメージを強く意識した戦略はあきらかにSPAとは違っています。また、アパレル商品に限らず、幅広い商材を扱うという点もSPAとの違いでしょう。
D2CとSPAの違いは?
では、D2CとSPAの違いについてもう少し深掘りしてみましょう。
両モデルの違いとして、2つのポイントを挙げることができます。
効率性を売るのか世界観を売るのか
1つ目は、効率性を売るのか世界観を売るのかという違いです。
SPAは、トレンドやニーズをいち早く把握して、より効率的に商品を販売することを目的としています。より良い商品を、よりスピーディーに提供するという点に注力しており、利益率を高めるという点もポイントとなります。一方のD2Cが重要視するのは、世界観です。ブランドイメージやライフスタイルなどに重きを置き、商品をただのモノとして解釈するのではなく、より踏み込んだストーリーの構築が鍵となります。流行やトレンドを追い掛けることはせず、あくまでの自社の一貫した世界観に基づいた商品とサービスを提供する。これに共感したユーザーが商品を購入するというスタイルです。
そのため、時には効率性を求めないアプローチも採用します。結果として、その手法が世界観を構築することに繋がればOKという訳です。
ユーザーへのアプローチの違い
2つ目は、ユーザーへのアプローチの違いです。
SPAではプロダクト(商品)では効率性を重視するため、リスティング広告やWeb広告などを活用します。より即効性があり、効率的に利益率を高めるアプローチが中心です。一方のD2CはSNSやオウンドメディアがマーケティングの中心にあります。即効性という意味では劣るものの、こうしたツールは世界観を伝えるにはうってつけで、D2Cの哲学と相性が良いといえます。また、ユーザーと密なコミュニケーションを育みながら関係性を構築することで、中長期的なLTV向上という視点ではむしろSPAを上回るといえます。
まとめ
今回は、D2CとSPAの違いについて詳しく解説しました。
どちらもメーカー直販型のビジネスモデルとして混同されがちですが、SPAが効率性を重視していることに対し、D2Cでは世界観を提供することに重きを置くなど、両者の本質には違いがあります。