D2Cモデルのビジネスに注目が集まっていることはわかりましたが、実際に自社でD2Cビジネスに参入する際にはどのような点を意識すればよいのでしょうか。
今回は、自社がD2Cモデルのビジネスに参入した際、成功に導くために意識すべき10のポイントをご紹介いたします。
D2Cマーケティングの目的は、ユーザーメリットの最大化による「コアファンの獲得」
D2Cモデルでは、高品質で低価格な商品や顧客第一を徹底した親切なサービス提供をもって顧客体験を最優先に展開します。
また、素早く確度の高い顧客データやフィードバックを活かした製品開発や改善を行うことでユーザーメリットを最大化することが可能です。
顧客ファーストの満足度の高いブランド体験によって熱心なコアファンを獲得し、継続的かつ長期的にブランドを利用してもらうことが最大の目的であり大前提となることを改めて認識しておきましょう。
1. マーケティングの基本は必ずおさえ明確にする
D2Cモデルにおいてもマーケティングの基本をまず押さえることが大切です。
たとえば以下のSTPはマーケティングにおける代表的なフレームワークですがD2Cマーケティングを進めるうえでも基本になります。
- Segmentation(セグメンテーション)
市場を顧客のニーズごとに細分化・グループ化 - Targeting(ターゲティング)
競争で優位を得られる自社・ブランドが参入すべき市場セグメントを選定 - Positioning(ポジショニング)
顧客のニーズを満たし自社・ブランドの機能やコスト面など差別化要因と独自性が受け入れられるポジションの確立
そのほか、3C、SWOT、PEST、4Pなど、様々な基本的フレームワークがありますので分析しマーケティング戦略を立てることが大切です。
あわせて、
- どんなミッションやストーリーを消費者に伝えていきたいか
- ブランドの世界観・ビジュアルを統一しどのように発信するか
- 消費者にとってブランドがどのような存在になりたいか、あるいはどのようなブランドと認識されたいか
など、ブランディングの方向性についても明確にしましょう。
市場における自社の独自性や差別化要因をはっきりさせ、ターゲットに向けたブランドの「想い」を発信していくことで、消費者が自社ブランドを選ぶ「意義」を色濃く訴求することができます。
2. カスタマージャーニーを設計する
自社・自ブランドを利用する顧客の人物像(ペルソナ)を設定し、顧客が商品の購入に至るまでにどのような行動を行うのかを時系列で表す「カスタマージャーニー」を設計することもD2Cにおいてマーケティングを成功させるのに重要です。
カスタマージャーニーを設計することで、時系列ごとに顧客がどのような考え方を持ってどのような行動を行うのかを理解することができ、タッチポイントごとに適切なマーケティング施策を打ち出すことが可能になります。
たとえば、ファッションブランドを展開するD2Cブランドであれば、服のサイズ感に加えて布生地の質感を確認したいというニーズもあります。
その場合は、ポップアップストアを展開したり、製品の購入ではなく品質を確認してもらう目的で実店舗を出す「ショールーミング」を導入することで、製品購入の不便さを取り除き、顧客体験をより洗練させることもできます。
D2Cモデルでは顧客の1次データを取得できる点が大きなメリットですので、顧客とのタッチポイントごとに自社の想定するカスタマージャーニーと実際のデータが乖離していないか確認しながらマーケティングの方向性を模索していきましょう。
3. 自社のD2Cブランド製品により顧客が得る体験・メリットを洗練させる
D2Cマーケティング成功の肝とも言えるのが、自社のD2Cブランド製品によって顧客が得られる体験やメリットを洗練させ、最大化させることです。
- コスト削減によ低価格・高品質の製品を提供
- 無料返品保証
- ニーズに合わせて製品をカスタマイズできる仕組み
- オンラインで気軽に製品のアドバイスを受けられる体制
など、製品の購入までから購入後に至るまで、一貫した顧客メリットを充実させましょう。
顧客に寄り添ったサービス提供は、企業やブランドの熱心でコアなファンの獲得につながる重要な要素であり、D2Cビジネスを継続的に行うためには必ず追求しなければならないポイントとなります。
4. 立ち上げるD2Cブランドの利益構造と実現可用性のバランスを丁寧に設計
D2Cモデルはユーザーへ大きなメリットを提供できる反面、生産や配送などを自社で行うため初期投資が大きくなります。
参入後も初期投資コストを回収しつつ継続的なシステム(仕組み)運用を行い、顧客確保のためのマーケティングも独自に行わなければならないなど、D2Cビジネスを導入する企業に掛かる負担が大きくなります。
机上では上手く回りそうなモデルに思えても、いざ実施してみるとユーザーへのメリットに振り切った結果、採算性が悪くビジネスとして成り立たないといったトレードオフに陥るケースも想定されます。
顧客の利益を最大限追求することは大切ですが、D2Cビジネスを継続できる利益構造と実現可用性のバランス、成長性を丁寧に設計しておくようにしましょう。
5. ブランド愛(熱量)をもち継続的に運用を行う体制・チームをつくる
熱心でコアなファンを確保できるほどの優れた製品やブランドをつくり出すためには、ブランド愛や高い熱量を持って継続的に商品開発から製造、マーケティング、カスタマーサポートを行える体制・チームをつくることが重要です。
D2Cモデルで成功を収めているブランドの中には元顧客を従業員として迎えているブランドもあり、顧客視点で優れた商品・サービスをつくり出しています。
いかに熱心なファンを獲得するかにウェイトが置かれるD2Cにおいては、ブランドをつくり出す従業員やスタッフにも高い熱量が求められていることを忘れないようにしましょう。
6. 顧客に刺さるD2C用オムニチャネルを構築する
顧客の利便性を向上し、満足度を高める取り組みとして「オムニチャネル」の構築が挙げられます。
オムニチャネルとは複数の販売チャネルを活用する「マルチチャネル」をさらに発展させたもので、販路や顧客との接点を統合し、あらゆるチャネルにおいて顧客がシームレスにサービスや製品を購入することができる仕組みです。
D2Cマーケティングにおいては主なターゲットとなるデジタルネイティブ世代に好まれるSNSをメインに活用しECサイトに誘導することが基本の形となります。
もちろんSNSだけではなく、テレビやラジオといった従来のメディア、自社オウンドメディアやメルマガ、あるいは実店舗やイベントなど様々な場所で顧客との接点を生み出すチャンスがあります。
取得したデータを分析し、ターゲットとなる顧客にとって最も適したチャネルとチャネルごとの施策は何かを検証し構築することもD2Cマーケティング成功への近道となります。
7. 自社によるECサイト・生産・流通の仕組みを最適化する
D2Cモデルでは流通や小売、大規模ECサイトといった仲介業者を利用しないことによって仲介手数料等のコスト削減が可能です。
製品やサービスの品質は高い状態を維持しつつ、自社によるECサイトや生産・流通の仕組みを最適化し無駄をなくすことでさらに大きくコストを削減でき、ユーザーメリットとして還元することができます。
新しい技術は日々生み出されていますので、最新の技術情報を取得し自社ビジネスに応用できるか模索し続けましょう。
8. 顧客とコミュニケーションや得られたデータを通して製品の改善を続ける
メーカー・ブランドと顧客が直接コミュニケーションを行うD2Cでは仲介業者から得られるサードパーティデータではなく、確度の高い「生」のファーストパーティデータが得られます。これらのデータは商品やサービスなどブランドの改善に大いに役立ちます。
顧客に寄り添った継続的な商品とサービスのブラッシュアップこそがD2Cの肝であり継続への鍵となります。
顧客とのコミュニケーションや得られたデータを分析し、PDCAサイクルを高速で回しながら提供価値を高めていきましょう。
9. SNSを活用してD2Cブランドの理念・ストーリー・メッセージを共感できる形で訴求する
D2Cマーケティングでは顧客・ファンの支持や信頼をいかに獲得できるかが重要課題となります。
- 自社やブランド独自の魅力的な世界観
- チャリティや社会活動をはじめとしたソーシャルグッドな活動
- どのようなミッションを持ち消費者の課題・不満・悩みの解決を行っているのか
など、積極的に情報発信してそれを見た人の共感を生み出すこともファン獲得には欠かせません。
「シェア」や「共感性」に重きを置く価値観をもったデジタルネイティブ世代にとってSNSは馴染みが深く、D2Cブランドの理念やストーリー、メッセージを届け共感を獲得するメディアとして最適といえますので、積極的に活用してユーザーとコミュニケーションを行いましょう。
10. SNSマーケティング施策により良質なUGC獲得を目指す
自社によるSNSでの発信とともに、消費者が自発的にD2CブランドについてSNSでシェアしてくれるように工夫することも重要です。ユーザーが投稿したコンテンツ「UGC」は、広告臭がないオーガニックな投稿でありつつもブランドの露出が増え認知拡大に貢献してくれるためです。
また、最近では検索エンジンよりもSNSで何かを調べる消費者も増えており、SNSでの検索結果に自社に関する多くのUGCが表示されることで話題性の高いブランドや製品であることもアピールしやすくなります。
D2Cで成功を収めているブランドにはSNSを活用して
- 独自の世界観の表現やユニークで面白い投稿
- 企業と消費者の距離感を近づけるフレンドリーなやり取り
- SNSキャンペーンで話題性創出
- SNS広告による認知拡大
- インフルエンサーやアンバサダーによる共感・口コミ発信
など、SNSを活用したコミュニケーションに秀でているブランドが多いです。
ミレニアル世代からZ世代に至るデジタルネイティブ世代はSNS情報感度が高くトレンド発信にも積極的です。
SNSにおいてユーザーに「イケてる」と思わせるような施策やコミュニケーションを実現することで、SNSやその他メディアにおいて多数のUGCをきっかけとしたフォロワー・ファン獲得につながります。