ECでの販売、個人でのものづくりが一般化してきており、D2Cモデルという生産から販売までも独自で行う事業モデルへ参入する企業が増えてきています。
基本的には全てのバリューチェーンの構築も自社で行うため、中間業者や卸売業を介さないため、利益率が高く参入しようと考える人もいますが、一方で在庫を保有するのでキャッシュフロー管理は難しくなります。
この記事ではD2Cの利益率や損益について説明します。
D2Cの利益率が高い理由
D2CはDirect to Consumerの略であり、直接顧客に商品やブランディングやマーケティングを行います。
D2Cモデルの利益率が高い理由は3つあります。
- 中間業者や代理店を介さない
D2Cの基本方針は自社で全てを行うことで、他社に模倣されないバリューチェーンを作りあげます。
そのため、広告代理店、EC運用代行、卸売業者などを利用しないため、販管費を抑えることができます。
その分、優秀な人材の採用や広告費に費用を投じることができ、D2Cブランドで積極的にマーケティング活動を行えるの理由はここにあります。
基本的には自前で行いますが、物流は物流会社を利用しますし、必要に応じては他社との連携はしています。 - 店舗を持たない
D2Cはメーカーでもあり、小売業でもあります。
小売業は利益率が低い業態と言われており、店舗を保有することで毎月固定の家賃が発生するため利益率が低くなっています。
D2Cの主戦場は店舗などのオフラインではなく、自社ECを活用したオンラインですので家賃などの固定費を削減することができます。
また、店舗の従業員の人件費や採用・教育の負担も無くなります。 - 粗利率がいい
商品の粗利率は商材によって大きく異なり、家電製品などは低いですが化粧品などは高い粗利率となっています。
D2Cに参入する企業や商材は粗利率が50%以上の者が多いです。
化粧品や日用品がTVCMなどを積極的に行なっている理由は粗利率がいいため、利益が出しやすいからです。
D2Cの損益
ビジネスモデルや商材によっても異なりますが、D2Cの売上は物販の売上高から成り立ちます。
そのほかの付帯サービスや他事業を行なっている場合は、売上は上積みされます。
その売上から仕入れを引いた数字が粗利です。
仕入れは商品原価 + パッケージ + 同梱物の合計で、仕入れが販売額の半額未満にできるとD2Cモデルとしては損益構造上成り立ちます。
しかし、50%以上の場合は仕入れコストの検討や事業モデルの変更などの検討も必要です。
D2CモデルはECでの販売を中心とするため、店舗家賃などはかかりませんが、EC特有の倉庫家賃、EC利用料、決済手数料、配送に関わる物流費や梱包などの人件費も発生します。
そのほかにもオフィスの家賃やシステム利用料などの費用があります。
損益の鍵になるので、広告費にどのくらい投下するかで営業利益率が異なってきます。
広告費をかけずに売上が順調な場合は営業利益が30%確保することも可能ですが、積極的に投下した場合には営業利益が赤字になることもあります。
D2CのKPI
D2Cの商材の販売の仕方で主要KPIが異なります。
単品販売(売り切りモデル)と継続販売(サブスクリプション、定期販売)があります。
単品販売の場合は、商品の売上が主要KPIになり、毎日の売上点数を管理する必要がありますが、KPI管理などは比較的わかり安く簡単に行えます。
単品販売は広告費が高騰している昨今において、一回限りでの使用では収益かしにくくなってきてしまいます。
単品販売では収益化しにくいため、長期に利用を促進するために、継続販売(サブスクリプション、定期販売)が一般化してきています。
サブスクリプションの重要なKPIは「新規顧客獲得単価(CAC)」と「生涯利益(LTV)」です。
「新規顧客獲得単価(CAC)」とは一つの顧客を獲得するために発生した費用で、主に人件費と広告費を合わせたものになります。
D2Cの場合は月次で計算することが多く、月間の新規サブスクリプション会員と使用した人件費と広告費を用いて算出します。
「生涯利益(LTV)」は1人の新規顧客が生涯どの程度会社に利益をもたらすかという数値です。
売値から原価を引いた限界利益に、購入回数ごとのリピート率をかけていって算出できます。
月次のLTV推移からCACを引いた金額が黒字になるまでの期間です。
スタートアップなどはなるだけ回収期間を短くする努力が必要で、1年以上かかる場合はビジネスモデルや広告費使用の仕方などが適切でない可能性があります。
D2Cモデルを成功させるポイント
1ユーザーあたりの利益を最大化するために重要なポイントは2つあります。
- 利益率を高く設定すること
粗利率の高い商材を選ぶことで、広告費の投入や売上増加に伴う変動要素への対応が可能になります。
一方で粗利率が低い商材では、売上が増加しても忙しくなるだけで、なかなか儲からない、利益ができな状態になります。 - 購買回数を上げること(退会率を下げること)
単品販売からサブスクリプション販売へ切り替えを促し、リピーターになってもらい購買回数をあげることが重要です。
そして、定期購買後は解約しない工夫をして、継続的に売上が確保できる状態にする必要があります。
退会率を下げるためには商品の改善、新鮮さや新商品の投入、カスタマーサポートの充実などがたくさんのことする必要があります。
以上、説明したように自社で多くのことを行うため利益率が高くなっていますが、バリューチェンや仕組みが複雑なので、事業の難易度としては非常に高いです。