今回は、D2C×グローバル展開しているファッション業界の課題とその解決策について、みていきたいと思います。今回の結論を先に述べると以下3つに集約されます。
- 日本のデザインがグローバルで受け入れられない:日本で通用したプロダクト・サービスが、世界にとって良いものかどうかは、ユーザーにある。そのため、できるだけはやくグローバルユーザーを取り込んでプロダクト・サービス改善をしていくことが重要。
- 海外展開すると価格が上がる:グローバル展開であっても、D2Cモデルや最新のツールを駆使すれば、コストを抑えてブランド展開が可能。
- 海外でブランドメッセージを伝えるハードルが高い:自分と現地の両方を理解できる人、パートナーを巻き込めると、グローバルブランド展開はより効果的に進む。
この3つのポイントを抑えながら、記事をみていただければと思います。
従来のやり方から変わるファッションブランドのグローバル進出
日本国内のファッション市場縮小を背景に、日本のアパレル企業にとってグローバル進出は避けて通れなくなってきております。ただし、この「グローバル進出」というのは、今までのファッション業界におけるグローバル展開とは変わってきていると考えます。
従来のファッションブランドのグローバル化といえば、パリコレを代表とするファッションウィークを中心とした卸売と直営店やフランチャイズによる小売の2つのチャネルが主流でした。
しかし、スマートフォンの普及によるSNSやECなどへのデジタルシフトや、環境問題/生産者の人権問題などの関心増加による意味のない消費の見直しにより、既存の2つのチャネルが変わりつつあります。さらに、コロナショックによりファッションブランドのデジタルシフトが今まで以上に必要になっている。
一方で、デジタルシフトしてグローバル展開と言ってしまえば簡単に聞こえるが、ファッションブランドにおけるグローバル展開には様々な課題が出てきております。
今回は、ファッションブランドのグローバル展開時に直面する、よくある課題を紹介していきながら、その課題に対する解決策も言及しているので参考にしていただきたいです。
ファッションブランドのグローバル進出の課題とは?
1. 日本向けのデザインに固執するとグローバルで受入れられない
そもそも日本とグローバルで生活習慣や天候や嗜好性に違いがあるので、今まで日本向けに作っていた服がグローバル市場では刺さりづらくなってしまう。当たり前に聞こえるかもしれないが、日本の「良い」とグローバルの「良い」は違うので、日本で作り込んだ「自信のある商品」に固執しすぎるとつまずいてしまう。
例えばラグジュアリーブランドの場合、日本のユーザーはデザインより機能を重視して、グローバルのユーザーはユニークなデザインを重視する傾向にある。筆者の経験でも、日本で売れていたのは、1枚でお洒落に見える防寒のロング丈のミリタリージャケットで、グローバル市場では複雑なレイヤーがあるトレンチコートでした。
すでに日本である程度の業績のあるブランドだと、商品そのものへの固執がなおさら強くなる。自社製品に自信を持つことは悪いことではないが、それがユーザーにとって良いのかどうかは、ユーザーが決めることです。
解決策: 現地ユーザーとの声を集めてプロダクト/サービス開発をする
このような課題に対する解決策として提案したいのが、ブランド・商品をそもそも最初からグローバルユーザー向けにデザインしていくということです。
また、すでに日本向けに立ち上げているブランドであっても、ブランドの根底の部分や大事なストーリーは確立しつつ、進出先のユーザーの声を集め、プロダクト開発やサービス開発を進めていくことが効果的です。
つまりグローバルユーザーを巻き込んだプロダクト/サービス開発には、進出先の土地勘やローカルコミュニティ、ローカルユーザーの理解と繋がりが重要になってきます。まずはそういった繋がりを獲得するための、有益情報取得、現地視察、パートナー探しなどをしておくとがオススメです。
ちなみに、日本市場を飛ばして最初からグローバルブランドとしての確立を目指すことには、重要な利点があります。それは、「海外で成功したブランド」として、そのあとの日本市場で戦っていけるということです。いわば、逆輸入ブランド。日本人の特性であるが、海外でポジションを築くことができているブランドに対する嗜好性が比較的高いため、日本市場での展開でも有利に働くことになるでしょう。
2. グローバルの販売価格が日本国内より大幅に高騰する
海外に商品輸出して販売する場合、日本のユーザー向けに商品を提供してる時には必要なかった関税・輸送量が上乗せされます。卸の場合は卸値(ホールセールプライス)での取引なので、卸先小売業者の利益を乗せられ、結果、グローバル市場では日本の販売価格の1.4倍〜2倍で売られているのが普通になってきます。
特に中国では、日本の価格の2倍以上で販売している事例も珍しくはなく、同じ商品で1.4倍〜2倍の価格になる場合、商品自体の価値をあげないと価格の妥当性がなくなってしまいます。
解決策:D2Cブランドとしてのグローバル展開
海外展開においても、こういった中間業者のマージンをなるべくなくすことは、コストカットに繋がります。つまりD2C(Direct-to-Consumer)モデルをグローバル規模で行うということです。
従来の小売・卸を中心とした販売スタイルでなく、ECを中心といたD2Cとして展開できれば、中間コストを抑えて、グローバルでの価格差を最小限に抑えられます。
一方で最終的には、コストを最小限に抑えたグローバル価格でも、ユーザーに価値を見出してもらえるだけの商品・ブランド体験作りはいずれにしろ必要になります。
さらに、日本ブランドにとって、「グローバル x D2C」というモデルが今、追い風になっています。その理由は、ShopifyやSquareなど越境ECのプラットフォームサービスが増え、気軽に日本に在庫を置きながらグローバルの消費者に向けて商品を届けやすくなっているからです。
また、アメリカではECでモノを買う習慣が日本よりも定着しており、価格の妥当性がある魅力的な商品であれば越境ECで買うニーズは十分にあります。
3. 海外でブランドメッセージを伝える難しさ
直営店で働くスタッフは、日本人ではなく、日本のことをあまり知らない現地の人になります。日本に馴染みのない現地スタッフを通して、自分たちの伝えたいメッセージや世界観を広げていくのは至難の技なのです。卸の場合においても、ブランドのコンセプトすら知らずに小売業者がユーザーに販売しているのが現状です。
解決策:ブランド作り手と現地のコト/人を理解している人材と共にブランド開発
現地での(ブランド)コミュニケーションを円滑化させるためには、その土地の文化・言語を理解する人材をブランドに巻き込んでサービス/プロダクト開発、クリエイティブ制作などを行う必要があります。
特に、ブランドの作り手・創業者と進出先国、両方の文化的背景やコミュニケーションを理解している人が入っていることが重要です。両者を理解する人が媒介となって、日本馴染みがない現地スタッフともメッセージングに関して統制が取れていくようになります。
創業メンバーがその土地のコトや人を理解するのも大事だが、現地の感覚をすでに持った理解者を巻き込んだ方が、スピード勝負が可能になり、無駄な労力がいらなくなります。今後もコロナの影響で人の移動が制限される可能性があるので、現地にこのようなパートナーは必要になってくるでしょう。
まとめ
以上をまとめると、日本のファッションブランドは、自分たちにとって「グローバル進出とは何か」、「どうグローバル進出すべきか」という点を改めて考える必要があるということになります。
また、今までのファッションブランドの海外進出において、共通する課題をあげたが、それらに対する解決策として以下を例としてまとめさせていただきます。
- 日本で通用したプロダクト・サービスが、世界にとって良いものかどうかは、ユーザーにある。そのため、できるだけ早くグローバルユーザーを取り込んでプロダクト・サービスの改善をしていくことが重要。
- グローバル展開であっても、D2Cモデルや最新のツールを駆使すれば、コストを抑えてブランド展開が可能。
- 自分と現地の両方を理解できる人、パートナーを巻き込めると、グローバルブランド展開はより効果的に進む。