Amazonと楽天を中心に日本のECは2010年代で市場に浸透し、国民にとっても必要不可欠なサービスになりました。近年ECが多様化して、動画配信を用いたライブコマース、オンライン接客ができるチャットボット、消費者から消費者に直接販売できるC to Cなどがあります。
このような多様化しているサービスの中で越境ECが継続的に注目されています。
越境ECとは国境を超えて商品の売買を行うことで日本では海外に向けて商品を販売・発送することが多いです。
越境ECの販売先は世界中全てですが、その中でも中国からの購入が多い状況です。その背景にあるのは、人口が13億人と母数は多いと、日本の商品の品質への信頼感が高いからです。2015年ごろ中国からの観光客による「爆買い」が話題になったことがその証拠です。
中国への越境ECの可能性
中国は人口13億人を抱える世界最大の国で、直近20年間目覚しい経済成長を遂げており2010年頃に名目GDPで日本を抜き、現在はアメリカにつぐ経済大国です。
ECにおいても中国はまさにEC大国で世界のEC市場規模の約56%を中国は占めており、事業者と利用者の両方のECに対する理解や経験は日本も高いです。
中国ECの市場規模は約162兆円で日本の約15倍にも相当し、中国のEC市場において日本からの購入金額は約1.5兆円であり経済産業省の予想では2022年までに3兆円になると予想されています。
事実、越境ECを使う中国人のうち約65%の人が日本の製品を「購入したことがある」と答えています。
越境ECをするための中国ECの特徴
越境ECで商品を販売する場合は、中国へのプラットフォームへの出店・出品が必要で、日本の楽天やAmazonに出品しても海外からの購入は皆無に等しいです。
中国では自国のECサイトが絶大な人気を集めており上位2社で約84%のシェアを占めています。
1位がアリババグループの「天猫(Tmall)」で52.5%
2位は京東商城が運営する「京東(JD.com)」で31.3%
日本は自社のECサイトを持つ会社も多く、ECモールの普及率は半分程度ですが中国ではECモール、アマゾンや楽天などの外部から出店ができるECサイトで上記のシェアを取っていることも特徴の一つです。
以下には日本から使う越境EC代表の2つの特徴を記載します。
天猫(Tmall)
上記のようにアリババグループの運営する中国最大のECサイトで出品するには中国での法人登記が必要になります。
事業者による正規品のみ出品が可能になっており信頼性が高いのが特徴です。
デメリットとしては参入障壁が高く、商標登録書・販売管理権利書などを取得する必要があり、手続き等含め出品までには約3ヶ月間かかります。
11月11日に「独身の日」として年間で最大のショッピングイベントが行われ、2019年度には一日流通総額2.87兆円を記録し、アリババグループの年間の流通総額の約70%に相当します。
Tmall Global(天猫国際)という越境ECも対応しており日本からも出品が可能で、民間企業だけでなく2017年には京都府が伝統工芸品を出品するなどして話題になりました。
京東(JD.com)
天猫に次ぐ中国を代表するECサイトで京東商城が運営しています。
天猫との一番の違いは直販型ECサイトであるという点で、天猫は日本でいう楽天市場のように事業者に出店してもらいプラットフォームとしてマネタイズをしていますが、京東はアマゾンのように自社で仕入れを行い消費者に販売をしています。
こちらもJD.worldwideとして越境ECに対応しており、2015年には「日本館」という日本の商材を専門に扱うECも用意され、日本に購買センターも完備しており日本商材の仕入れなど円滑に行うことができます。
中国への越境ECのメリットデメリット
中国への越境ECの一番のメリットは市場規模の大きさによる売上や集客の拡大です。
中国のEC市場は世界一であり拡大傾向にあり、単純な母数が増えるというだけでなく自国のECサイトでシェアを8割以上獲得していることもあり圧倒的なブランド力があります。
加えて、日本製品ということが追い風になっています。以前、中国人の「爆買い」があったように、その購買行動がお店からECへと移行しています。
越境ECで日本製品を購入する理由は「中国国内で販売されていない製品」と「品質」です。
中国の越境EC経由での日本からの購入金額は約1.5兆円で、アメリカからの購入金額約1.7兆円と大差なく、GDPなどの差を考えると日本製品の根強い人気があることがわかります。
一方デメリットもあり、商品の差別化が課題です。日本製品の人気は確かなものですが、日本からの参入社も多く、自社サイトと違い見せ方などで差別化できないことが難点です。
日本の大手消費財メーカーも多数出店しており、日本製品の中でのブランディング・競争という点はかなり激しいものとなっています。
中国は自国ECサイトがシェアの8割以上を獲得しており、独自の市場を作り上げています。
参入障壁は低くはありませんが、中国人の「爆買い」然り日本製品の人気は高くチャンスも多く、2大大手である天猫と京東はどちらも越境ECに対応しており、日本からも大手がどんどん参入できます。