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新しい販売方式「クリック&コレクト」の日本でのOMO戦略

インターネットとモバイル端末の普及とともに、オンラインショッピングの利用数は増加の一途を辿っています。
従来、オンラインショッピングでの商品受け取りは「自宅への宅配」が当たり前でしたが、近年は「クリック&コレクト」という選択肢も広がってきています。

 

「クリック&コレクト」とは

「クリック&コレクト(CLICK & COLLECT)」とは、ECサイトやネットショップなどのオンラインショップで購入した商品を、宅配ではなくリアル店舗やドライブスルー、街中の宅配ボックスなど「自宅以外の場所で受け取る」買い物方式のことです。ヨーロッパやアメリカを中心に、世界中で購買方法のトレンドとして普及しています。

類似用語として「BOPIS (Buy Online, Pick-up In-Store)」というものがありますが、こちらは商品の受け取り場所としてリアル店舗のみを表しているため、意味合いとしては「クリック&コレクト」に内包される形です。

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「クリック&コレクト」消費者側のメリット

「クリック&コレクト」の普及が進んでいる背景として、まず消費者にとってのメリットがあります。
まず、「送料を節約できる」ことで、自宅受け取りが前提のオンラインショッピングでは送料がネックになることが多いですが、「クリック&コレクト」では、販売者が指定する場所に商品を受け取りに行くことで、送料を安く済ませることができ、無料になる場合も多いです。

続いて、「都合の良い時間に受け取ることができる」という点で、自宅受け取りの場合在宅時間の短い人は「配送業者とすれ違ってしまい、なかなか受け取ることができない」という問題に直面します。
「クリック&コレクト」を利用すれば、都合の良い時間に受け取りに行くことができ、配送時間に縛られずに済むようになります。

そして、「リアル店舗で商品を選ぶ時間を節約できる」という点で、リアル店舗で買い物しようとすると、店舗の営業時間内に行かなければなりません。
混雑する時間帯に行くと、ゆっくり商品を見ることができない場合もありますが、「クリック&コレクト」の場合、商品選択や決済は事前にオンライン上で済ませるため、時間と場所に縛られずに買い物を楽しむことができます。

 

「クリック&コレクト」販売者側のメリット

販売者側にとってのメリットは、「消費者の自宅に個別に配送するよりも、配送コストを削減できる」という点です。
受け取り場所がリアル店舗の場合、既存の物流網に乗せて商品を送ることによって大幅なコスト削減が可能になり、街中の宅配ボックスを利用する場合も、個人宅へ届けに行く手数が減るため、配送コストを節約することができます。

続いて、受け取り場所をリアル店舗にした場合ですが「受け取りのために来店してもらうことによって、『ついで買い』が期待できる」という点です。
実際に、商品受け取りのために来店した客の多くが「ついで買い」をすることによって、客単価が上がった事例が多く報告されており、ECサイトとリアル店舗それぞれの特長を活かす手法としても注目されています。

日本における「クリック&コレクト」

日本においても、大手家電量販店やコンビニチェーンなどでは店舗受け取りサービスが浸透していますが、「クリック&コレクト」の普及はヨーロッパやアメリカと比べると未だ鈍い傾向にあります。
ここには、「元々の個人宅への物流サービスの品質が高く、再配達や時間指定を気軽に利用できる」という日本固有の背景がありました。
しかし昨今、物流業界における深刻な人手不足は社会問題化しており、配送料の値上がりという形で利用者にも跳ね返ってきており、これを解決する手法の一つとして、今後「クリック&コレクト」の活用は日本でもさらに進んでいくと考えられます。

ここで、日本における「クリック&コレクト」の代表事例を紹介します。

  • ユニクロ
    アパレル大手ユニクロでは、オンラインストアで購入した商品を、ユニクロ店舗で受け取ることができる店舗受け取りサービスを実施しています。
    受け取ったその場で試着ができ、店舗に在庫があればサイズ交換も可能です。
    また、裾上げのような「リアル店舗ならでは」のサービスを受けられることも特長で、ユニクロ店舗が近くにない場合でも、全国のコンビニ45,000店舗で受け取ることもできます。
  • イオン
    流通大手イオンでは、イオンネットスーパーで購入した商品を、イオン店舗の「カウンター」「ロッカー」「ドライブスルー」で受け取ることが可能です(選択できる受け取り方法は、店舗によって異なります)。
    特に日本ではドライブスルー方式での受け取りサービスはまだ珍しく、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年5月から本格導入されました。消費者の時間の節約のみならず、店内の混雑緩和にも役立っています。
  • マクドナルド
    ファストフードチェーン大手のマクドナルドは、Webサイトやアプリから来店前に購入した商品を店舗で受け取ることができるモバイルオーダーサービスを導入しています。商品は、テイクアウトはもちろんのこと、スタッフに店内テーブル席まで持ってきてもらい、すぐに食べることも可能になっています。

 

これまでに紹介した通り「クリック&コレクト」には消費者・販売者双方にとってメリットがあり、日本においても今後さらに浸透していくと考えられます。

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