ネット通販の普及により販売経路が多様化する中で、小売業界の間では今「クリック&コレクト」が注目を集めています。
好きな時間に注文商品が受け取れるサービスとして、さまざまな店舗が導入を検討し、売上を伸ばすために模索中です。
そこで今回は、クリック&コレクトについて解説しながら、実際に取り入れている小売店の事例を紹介していきます。
クリック&コレクトとは?
クリック&コレクトとは、インターネットで注文した商品を、自宅ではなく店舗で受け取りができるサービスのことです。
海外の小売店では広く採用されており、北米では半数以上の店舗で導入されています。
配送コストが抑えられ、自宅で待つよりも早く受け取れるので、販売者側・消費者側の両方ともメリットを感じられる仕組みです。
特に消費者側からは、欲しい物をオンラインでゆっくり選び、レジに並ぶ必要なく注文の商品が受け取れるため、顧客優先のサービスとして幅広く受け入れられています。
また販売者側も、配送コストが抑えられるというメリットを受けられ、顧客自ら店舗に出向いてくれれば送料が発生しません。
アメリカの大規模スーパーである「Walmart(ウォルマート)」や大手百貨店、アパレル業界でも取り入れられ、海外にあるほとんどの小売店がクリック&コレクトを導入しています。
クリック&コレクトの事例
ここからは、クリック&コレクトを導入している海外の事例を3つ、紹介していきます。
Argos(イギリス)
イギリスの大手量販店「Argos(アルゴス)」は、カタログ販売を中心としたオンラインショップです。
クリック&コレクトを取り入れているArgosでは、日用品や玩具、家電など約4万アイテムの商品を効率的に販売しています。
顧客がインターネットで注文する際は、店頭・配送のどちらで受け取るのかが選べ、多くの利用者は店頭受け取りを選択しています。
店頭のタブレットや備え付けのカタログでも、消費者は欲しい商品が注文でき、店舗の在庫があれば直接購入が可能です。
またArgosは返品にも対応しており、保証期間内に壊れた場合は新品と交換できるサービスもあるので、利用者からの評判を集めています。
さらに大量のアイテムを取り扱っているArgosは、クリック&コレクトを導入しオンラインと連携することで、消費者行動の分析に活かし業績を伸ばしています。
Best Buy(アメリカ)
アメリカの大手家電量販店の「Best Buy(ベストバイ)」は、クリック&コレクトを導入し、Amazonのシェアが拡大している小売業界を生き延びました。
ベストバイで販売する商品の3分の1は店頭で受け取られていると推測され、ほとんどの店舗には受け取り専用コーナーが設けられています。
また顧客は店頭で商品を受け取るだけでなく、必要な商品機器や消耗品についても店員の助言を受けられ、ついで買いを誘発し売上増につなげています。
スターバックス(アメリカ)
世界規模で展開するコーヒーのチェーン店「スターバックス」では、モバイルオーダーの形でクリック&コレクトを取り入れています。
アメリカ全土の直営店に導入され、利用頻度が最も高い店舗では、全体の約20%がモバイルオーダーでの注文です。
事前注文・決済のモバイルサービスを取り入れ、受け取り店舗へ到着する前に、スマホ上で注文から決済まで完結します。
店頭の行列に並ぶことなく、スタバのコーヒーを受け取れるサービスとして、モバイルオーダーは利用者の間で好評です。
また事前に決済してもらえれば、店頭での現金のやり取りがなくなり、現場のオペレーションが効率的になる、という店舗側のメリットもあります。
クリック&コレクトの今後
物流システムが高いレベルで整備されている日本でも、クリック&コレクトが今後広がるのではと予測されています。
現在の日本における物流の問題点は、サービスの質を求めたがゆえに現場の負担が増え、維持が難しいという点です。
クリック&コレクトなら、商品を消費者の自宅まで届ける必要がなくなり、配送業者の負担が減るため、日本でもより広く使われることでしょう。
今後は実店舗・コンビニに加え、主要駅のロッカーの拡充といった、商品を受け取れるピックアップポイントの充実が欠かせません。
インターネットが発達した現代では、テクノロジーを活用しながら顧客データを取得し、消費者のニーズに合わせて魅力的な顧客体験を提供することが重要視されています。
クリック&コレクトを導入することで、企業と顧客双方のニーズが満たされるため、今後も広がりを見せることでしょう。
海外と事情の異なる部分が多少ありますが、日本でも多くの小売店で取り入れられる日が近いかもしれません。