スマホの進歩により消費者の購買体験が大きく変化しており、店舗に行かなくてもオンラインで買い物をする人が増えてきています。一方で、今日商品が手元に欲しい方、仕事や学校の帰り道に商品を手にしたしたい方にはオンラインショップのECでは不向きな買い物体験でそのような場合は店舗に行って買い物を実施します。
近年、アメリカで話題になっている新しい販売と受け取りモデルとして、BOPISがあります。
BOPISとは、「Buy Online Pick-up In Store」の略称で、「ECで購入した商品をリアル店舗で受け取る購入方法」を意味しています。
ECだけでなくリアル店舗でも購買の場面がオンライン上にシフトしている近年、小売業やレストラン業を中心に大きな注目を集めています。後にアメリカではスタバ、日本ではニトリ等の導入を紹介しますが、このBOPISにはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
BOPISとは
BOPISとは一言で言うと、EC購入店舗受け取りです。
一般的には、小売店で店舗に訪問する前に電話の在庫の有無の確認をして、店舗で取り置きをしてもらい、店舗に足を運んで購入するケースや、デリバリーピザ屋などの店舗受け取りサービスのケースと似た仕組みとなっています。
今までは注文を電話で行い、店舗で支払いをしていましたが、BOPISはインターネットを通じて注文をすることができ、支払いもクレジットカードなどでできるため、店舗では受け取るのみになります。
ユーザー側から見たBOPISのメリットとは
多くの人がBOPISで購買体験をしていますが、ユーザー(消費者)から支持されているのは、とても便利だからであり、利用することのメリットは「配送料がかからないこと」「買い物の時間が短縮できること」「事前に在庫が確保できること」と言うことです。
BOPISの利用理由として一番多かったのが「配送料を払いたくないから」で、ECサイトで購入した商品をリアル店舗で受け取りにいけば配達料がかからないという点が支持されています。
次に、特に広大な店舗をもっている場合はBOPISで欲しい商品をピックアップするだけで、売り場を動き回る必要がなくなり効率的に買い物ができてしまう点も忙しいユーザーには魅力的です。
最後に、午前中には売り切れてしまうといった人気商品がほしい場合などにも、BOPISを使えば事前に在庫が確保でき、リアル店舗に行けば並ぶことなくすぐに受け取れるという点もユーザーに利用を続ける理由になります。
こうしたユーザーにとってのメリットが大きいことから、今後さらにニーズが拡大していくと考えられます。
事業者側から見たBOPISのメリットとは
ユーザーのみならず、事業者側にも多大なメリットがあります。
「他社との差別化により、顧客の囲い込みができること」「リアル店舗に取りに来てもらうことで、クロスセルが期待できること」「レジを介さないため、人件費を削減できること」などです。
上記のようなユーザーメリットから考えても、配送料のかかってしまうECのみを扱う他社や、毎回長蛇の列に並ばなくてはいけない店舗を扱う他社と比べて、当然ユーザビリティの面で差別化でき、顧客の囲い込みができます。
次に、BOPIS を使いこなす「オムニチャネル顧客(ECとリアル店舗を両方利用する顧客)」は、リアル店舗でしか買わない顧客に比べて消費単価が高くなっています。
それは、ECの場合基本的には目的の商品しか購入にいたりませんが、リアル店舗で商品を生で見たり、スタッフに接客されたりすることで、購入意欲が高まるためです。
最後に、全業種の中でも特に人手不足が深刻化している小売業やレストラン業といったサービス業界において、オンライン上で決済できるBOPISは無駄な人件費削減にも繋がります。その分上記のようなクロスセルを狙った接客に力を入れることで、売上拡大も期待できます。
BOPISはこうした事業者側のメリットも大きく、特にECとリアル店舗を展開している事業者は、今後積極的に導入していくことが考えられます。
BOPIS導入の事例
アメリカのレストラン業の中でも特にファストフード店では、いかに人件費を減らしてオペレーション効率を上げるか、という費用対効果の観点から各社がBOPISを取り入れ始め、現在ではスターバックスやマクドナルドをはじめとした大手チェーンのほぼすべてのファーストフード店で、オンライン上での注文ができるようになっています。
その代表として、米スターバックスでは2017 年「Digital Flywheel」と名付けたデジタル新戦略を打ち出し、「モバイル注文」「決済」「リワードプログラム」「パーソナライズ」をその柱に据えて顧客満足度の向上を掲げています。その米スターバックスでは、売り上げの約11%がBOPISとなっており、オンラインで注文すればドリンクも細かくカスタマイズできる等、BOPISを新たな接客の場として捉えていることがわかります。
日本の小売業界でも、ヨドバシカメラ、無印良品、東急ハンズ等、「店舗で受け取りサービス」としてBOPISの仕組みを持つスタイルは増えてきています。ただ、米国並みに大々的に打ち出しているケースは少なく、まだまだ発展途上だといえそうです。
その中でも家具販売のニトリでは、2016年からECとリアル店舗のオムニチャネル化に取り組み、その一環としてBOPISにも全店で力を入れています。さらにニトリではアプリのリニューアルを行い、ユーザーの使うECアプリ、店舗スタッフの使う従業員用アプリ共に、欲しい商品の画像をアップロードするだけで、商品そのものや類似商品にたどり着けるという機能を追加しました。これにより、SNSやブログなどに投稿された写真を見たことがきっかけで商品を購入したいユーザーが簡単に検索することができたり、またスマホに保存した画像をリアル店舗のスタッフに見せて商品を探してもらったり等、さらなるECとリアル店舗とのシームレスな繋がりが実現しているのです。
米国のみならず、中国でもオンライン注文はごく日常的な光景になっていることから、オリンピック需要と相まってBOPISのニーズはさらに高まっています。また社会的に見ても、近年サービス業界の人材不足が叫ばれている日本では、潜在的に BOPISが浸透するポテンシャルがあると言え、今後BOPISは国内で当たり前のサービスとなっていくと考えられます。